判旨
訴訟代理人の病気により期日への出頭が困難であっても、当事者本人や他の代理人による防御の余地があり、かつ証人尋問の不実施が当事者側の手続懈怠によるものである場合、期日変更をせず結審した判断に違法はない。
問題の所在(論点)
訴訟代理人が病気により出頭困難な場合に、期日変更を行わず口頭弁論を終結し判決を下すことが、審理不尽(民事訴訟法上の違法)や憲法違反に該当するか。
規範
期日変更の許否(民事訴訟法93条1項)に関する裁判所の合理的な裁量は、当事者の手続保障の観点から制約を受ける。しかし、代理人の事故等の事情があっても、当事者側において他の手段による防御が可能であり、かつ証拠調べが実施されなかった原因が専ら当事者側の不備にあると認められる場合には、期日変更を認めずに結審しても審理不尽の違法はない。
重要事実
上告人らの訴訟代理人が病気のため、口頭弁論期日に出頭することが困難な状況にあった。当該期日には証人尋問が予定されていたが、上告人側が必要な手続を怠ったため、尋問は行われないまま終了した。原審は期日の変更を認めず、そのまま口頭弁論を終結し、上告人らに不利な事実認定(特約の存在否定)を行い敗訴判決を下した。
あてはめ
本件では、代理人の病気という事情はあったものの、上告人ら自身が出頭するか、あるいは他の代理人を立てることで防御を尽くす余地が客観的に存在したといえる。また、予定されていた証人尋問については、当事者本人が不在であっても実施自体は可能であったにもかかわらず、専ら上告人側の手続懈怠によって実施されなかったという事情がある。したがって、裁判所が期日を変更せずに結審したことは、手続上の権利を不当に侵害するものとは評価されない。
結論
原審が期日変更をせず口頭弁論を終結したことに審理不尽の違法はなく、違憲の主張も前提を欠くため、上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟遅延防止の要請と適正な手続保障の調整を図る際の基準となる。代理人の一身専属的な事故であっても、組織的対応や本人による対応が可能であれば期日変更は義務付けられない。特に証拠調べが流れた原因が当事者の帰責事由(手続懈怠)にある場合に、裁量権の逸脱を否定する重要な根拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)928 / 裁判年月日: 昭和40年4月1日 / 結論: 棄却
準備手続を経ない口頭弁論期日の変更申立は、顕著な事由が存するときは、相手方の同意がなくても、これを許さなければならない。