当事者が証人および当該当事者本人の尋問を申請したが、二度にわたり指定した右証拠調を行うべき口頭弁論期日に右両名とも出頭せず、また、二度目の口頭弁論期日には右当事者の訴訟代理人も出頭せず、その不出頭の理由を釈明したなんらの書面の提出もなかつたときは、右証人および当事者本人の尋問が右当事者主張の抗弁事実立証のための唯一の証拠方法であつても、その取調べをしないで審理を終結することは違法ではない。
唯一の証拠方法を取り調べなくても違法でないとされた事例。
民訴法259条
判旨
当事者が申請した証拠が唯一の証拠であっても、証人および当事者本人が正当な理由なく出頭せず、かつ訴訟代理人も期日に出頭しない場合には、裁判所が当該証拠調べの採用を取り消して口頭弁論を終結させることは、証拠採否の裁量を逸脱した違法とはいえない。
問題の所在(論点)
当事者が立証しようとする事実についての「唯一の証拠」である証拠調べ申請に対し、正当な理由のない不出頭を理由に裁判所がその採用を取り消して口頭弁論を終結させた訴訟指揮が、証拠採否の裁量権(民事訴訟法181条1項)を逸脱・濫用したといえるか。
規範
裁判所は、当事者が申し立てた証拠について、これを取り調べる必要がないと認めるときは、これを取り調べないことができる(民事訴訟法181条1項、旧法259条)。この証拠採否は原則として裁判所の自由な裁量に委ねられるが、唯一の証拠については格別の必要がない限り却下できないという制約を負う。もっとも、証拠調べの実施が困難な状況や訴訟遅延を招く事情がある場合には、唯一の証拠であっても採用を取り消すことが許容される。
重要事実
上告人(控訴人)は抗弁事実立証のため、唯一の証拠として証人および代表者本人の尋問を申請した。原審はこれを採用し期日を指定したが、第4回口頭弁論期日に右証人らが出頭しなかった。さらに続行された第5回口頭弁論期日において、証人らのみならず上告人の訴訟代理人両名までもが適式の告知を受けながら不出頭となり、理由の釈明もなされなかった。原審は、当該証人等の尋問採用を取り消し、口頭弁論を終結した。
あてはめ
本件では、証拠調べのために設定された第4回期日に証人らが出頭せず、再度の機会を与えられた第5回期日においても、証人等のみならず申請当事者の訴訟代理人さえも正当な理由なく不出頭となっている。このような訴訟追行の懈怠がある状況においては、たとえ当該証拠が抗弁事実立証のための唯一の証拠であったとしても、裁判所が証拠調べを断念し、証拠採用を取り消すことは、円滑な訴訟運営の観点から合理的である。したがって、原審の判断は裁量の範囲内であるといえる。
結論
唯一の証拠であっても、当事者及び証人の不出頭等の事情があれば、証拠採用を取り消す訴訟指揮に違法はない。
実務上の射程
「唯一の証拠」の原則に対する例外的事例として重要である。実務上、唯一の証拠は原則として取り調べなければならないが、本判例は、当事者の非協力的な態度や訴訟遅延につながる事情がある場合には、裁判所の裁量による却下が認められることを示している。答案上は、裁量権の限界を画する要素として「当事者の訴訟追行の態様」を考慮すべき場面で引用する。
事件番号: 昭和33(オ)320 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の訴訟態度に照らし、正当な理由なく出頭しない証人の取調べ決定を取り消し、唯一の証拠であっても却下して弁論を終結させる措置は、民事訴訟法上の違法とはならない。 第1 事案の概要:被告(上告人)は第一審に呼出しを受けながら不出頭で敗訴し、控訴した。控訴審において和解が試みられたが不調に終わり、上…