民訴法第一八七条第三項は、同一審級における証人の再尋問に関する規定であつて、第一審において尋問された証人について、控訴審が同審における右証人の尋問申請を却下し、第一審における右証人の証言を事実認定の資料に供することは、同条項に違反するものではない。
民訴法第一八七条第三項の法意
民訴法187条3項
判旨
控訴審において、第一審で尋問済みの証人について再度尋問の申請があった場合でも、当該審級で未尋問であれば民訴法上の再尋問規定(旧187条3項)は適用されず、裁判所は唯一の証拠でない限り、必要性がないと判断して申請を却下できる。
問題の所在(論点)
第一審で尋問済みの証人について、控訴審で再度尋問の申請があった場合に、裁判所がこれを取り調べずに第一審の証言を援用して判決を下すことは、証拠調べの必要性判断および再尋問の制限に関する規定に抵触し、違法となるか。
規範
当事者が申し出た証拠方法については、それが唯一の証拠方法である場合を除き、裁判所が審理の経過から見て取調の必要がないと認めるときは、これを取り調べないことができる。また、同一審級において一度も尋問されていない証人については、前審(第一審)で尋問済みであっても、民事訴訟法上の「従前に尋問をした証人」の再尋問に関する規定(旧187条3項、現202条参照)は適用されない。
重要事実
控訴人(上告人)の代理人は、控訴審の第3回口頭弁論期日に証人Dの尋問を申請した。第4回期日において裁判官の過半数が更迭されたため弁論が更新されたが、同日に裁判所は証人Dの尋問申請を却下し、弁論を終結した。なお、証人Dは第一審において尋問が実施されており、控訴審(原審)はその第一審における証言を事実認定の資料として用いていたが、控訴審自体では一度も尋問を行っていなかった。
あてはめ
本件では、証人Dは控訴審において一度も尋問がなされていない。したがって、旧民訴法187条3項(同一審級における再尋問の制限)の「従前尋問をなしたる証人」には該当せず、同条項違反の問題は生じない。また、第一審で尋問済みである以上、控訴審において重ねて尋問する必要があるか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられる。本件の審理経過に照らせば、裁判所が証人Dの尋問を「必要なし」と判断して申請を却下し、第一審の尋問結果を証拠資料として認定に供した措置に、裁量権の逸脱等の違法は認められない。
結論
控訴審において第一審尋問済みの証人の申請を却下し、第一審の証言に基づいて事実認定を行っても、唯一の証拠方法でない等の事情がない限り違法ではない。
実務上の射程
控訴審における証拠調べの必要性判断に関する重要判例である。第一審で取り調べた証拠の再度の申出に対し、裁判所が広範な裁量を持つことを認めている。答案上は、控訴審の続審的性格(民訴法297条)や証拠調べの必要性(民訴法181条1項)を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)693 / 裁判年月日: 昭和31年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が証人の取調べの申出を放棄した場合には、裁判所は当該証人の取調べを行うことができず、出頭を強制すべき義務も負わない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証人Dを申請したが、当該証人に対する呼出状が不送達となった。その後、上告人は自らその証人の申請を放棄した。しかし、上告人は後に、原審が…