判旨
非常緊急の状態下で大規模な事業を速急に実施する必要がある場合、行政処分の告知は、相手方が処分を了知し得べき客観的状態に置かれれば、有効に効力を生じる。
問題の所在(論点)
非常緊急時において、家屋台帳の調査等が困難な状況下で行われた行政処分の告知が、相手方に直接到達していない場合であっても、効力を生じるか。
規範
行政処分の効力発生要件としての告知は、特段の事情がある場合には、必ずしも処分手続上の厳格な送達を要せず、相手方がその処分を了知し得べき客観的状態に置かれることをもって足りる。
重要事実
戦時下の東京都における第六次強制疎開において、東京都はD本店に対し疎開命令を発した。当時、非常緊急の事態により大規模な事業を迅速に遂行する必要があり、平常時のように家屋台帳を調査して個別に送達を行う余裕はなかった。そのため、東京都は特定の方法(詳細は判決文からは不明だが「判示のような措置」とされる)により告知を行ったが、上告人は当該告知の効力を争い、借地権の消滅を否定した。
あてはめ
本件疎開命令が発せられた当時、東京都は非常緊急の状態にあり、大規模な疎開事業を速急に実施する必要があった。このような状況下では、家屋台帳を調査して個別の告知方法を講ずることは実際上不可能であった。したがって、当時の状況に照らせば、とられた措置によってD本店が疎開命令を了知し得べき客観的状態に置かれたと認められるため、告知としての効力を肯定するのが相当である。これにより、命令の告知とともに東京都は敷地上の借地権を適法に収用取得したといえる。
結論
本件疎開命令の告知は有効であり、これに伴う借地権の収用取得も正当である。
実務上の射程
行政処分の効力発生時期に関する重要判例。原則として告知は相手方への到達を要するが、本判決は、戦争等の極限状況下においては「了知し得べき客観的状態」で足りるという緩和された基準を示した。現代の災害時等における緊急処分等の有効性を論じる際の類推適用が検討され得る。
事件番号: 昭和32(オ)60 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が不在中であっても、その配偶者が本人の代理人として強制疎開に伴う建物及び借地権の対価を受領し、当該権利の消滅を了承したと認められる場合には、その効果は本人に帰属し、借地権は有効に消滅する。 第1 事案の概要:上告人(借地権者)は山梨県下に疎開しており、その不在中に第六次の強制疎開が実施された。…
事件番号: 昭和28(オ)761 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 棄却
一 土地の賃借権の共同相続人の一人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、民法第六一二条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。 二 戦時罹災土地物件令第三条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその…