判旨
強制疎開に際して建物および借地権の対価を含む補償金を受領した場合には、借地権は消滅したものと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
強制疎開に伴い建物および借地権相当の補償金を受領した場合に、借地権が消滅したといえるか。また、借地権の消滅には公的機関による権利の承継取得が必要か。
規範
建物疎開等の行政上の必要に基づき、建物所有者が建物およびその敷地利用権(借地権)の双方を対象とした補償金を受領した場合には、当該権利を公的機関が買い取ったか否かにかかわらず、当該補償金の受領をもって借地権は消滅する。借地権の消滅にあたっては、旧借地人の支配を排すれば足り、必ずしも公的機関による権利の承継取得を要しない。
重要事実
上告人は、第六次強制疎開に際し、東京都から建物に対する補償のみならず、当該建物敷地の借地権に対する補償も含めた金額を受領した。その後、借地権の存否が争点となったが、原審は補償金の受領をもって借地権が消滅したと認定した。これに対し上告人は、地方長官や東京都が借地権を買い取って取得したわけではない以上、借地権は消滅しないと主張して上告した。
あてはめ
上告人は、東京都から建物および借地権の対価を包含する補償金を受領している。防空上の必要に基づく借地権の消滅は、建物除却後の跡地について旧借地人の支配を排すれば足りるものであり、旧防空法5条の8に基づき地方長官がこれを使用し得る。したがって、東京都等が借地権を買い取って取得したという形式をとらなくとも、対価たる補償金の受領という実態がある以上、借地権は消滅したものと解される。原審の判断に矛盾や法令違反は認められない。
結論
借地権に対する補償金を受領した以上、借地権は消滅する。したがって、上告人の請求は認められず、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和30(オ)166 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権は一個の債権として放棄することが可能であり、当事者間に賃貸借契約の合意解除が成立したと認められる場合には、当該借地権は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、いわゆる第六次強制疎開に際し、東京都から本件土地についての借地権喪失に対する補償を受けた。その後、上告人は当該借地権を放棄する意思を示…
実務上の射程
行政上の強制処分に伴う損失補償と私法上の権利消滅の関係を示す。補償対象に特定の権利が含まれている場合、その受領をもって当該権利が消滅したと認定する際の有力な根拠となる。建物疎開などの歴史的事案に限らず、損失補償がなされた際の権利帰属の判断枠組みとして参照し得る。
事件番号: 昭和30(オ)591 / 裁判年月日: 昭和32年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時下の建物疎開事業において、建物と借地権の補償を合算した「特殊の算出方式」による補償は、借地権に対する補償を欠くものではなく、憲法29条3項に違反しない。 第1 事案の概要:上告人の先代は、昭和20年3月の第六次建物疎開事業により、所有建物およびその敷地の借地権を失った。当時の東京都知事通牒は、…