判旨
本人が不在中であっても、その配偶者が本人の代理人として強制疎開に伴う建物及び借地権の対価を受領し、当該権利の消滅を了承したと認められる場合には、その効果は本人に帰属し、借地権は有効に消滅する。
問題の所在(論点)
本人が不在の場合において、その配偶者が行った借地権等の対価受領および消滅の了承という行為の効果が、本人に帰属するか。特に、本人の個別の不知や不承諾が当該効果を妨げるか。
規範
本人の配偶者が、本人の代理人として法律行為(対価の受領及び権利消滅の了承等)を行ったと認められる場合には、代理権の法理に基づき、その行為の効果は直接本人に対して帰属する。
重要事実
上告人(借地権者)は山梨県下に疎開しており、その不在中に第六次の強制疎開が実施された。これに伴い、上告人の妻が上告人に代わって強制疎開の趣旨を暗黙に了承し、建物及び借地権の代金支払を受けた。上告人は、自身が建物除却の事情を知らず、借地権消滅を承諾していないとして、借地権の存続を主張した。
あてはめ
原審において、上告人の妻が上告人に代わって強制疎開の趣旨を了承し、建物及び借地権の代金支払を受けた事実が認定されている。この認定に基づけば、妻は上告人の代理人として振る舞ったものと解される。上告人自身が疎開中であり事情を知らなかったという個人的事情や、上告人自身による直接の承諾が判示中に見当たらないことは、代理人である妻を通じて行われた法律上の効果帰属を左右するものではない。
結論
上告人の妻による代金受領と了承の効果は上告人本人に帰属するため、借地権消滅を否定する上告人の主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
夫婦間における日常家事債務の代理権(民法761条)や、不在者等の代理関係が背景にある事案において、本人以外の家族による権利処分・対価受領の効果を本人に帰属させる際の事実認定の在り方を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)606 / 裁判年月日: 昭和39年8月20日 / 結論: 棄却
甲が乙に対し賃借権譲渡の承諾をした旨の主張がなされた場合に、裁判所が、甲代理人丙が乙に対し賃借権譲渡を承諾したと認定しても、弁論主義に反するとはいえない。
事件番号: 昭和30(オ)859 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条による借地権の対抗を受ける第三者の中には、当該土地について借地権を取得しその上に登記した建物を所有する者をも含む。
事件番号: 昭和30(オ)425 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の使用が一時的なものに過ぎない場合、賃貸借契約の成立は否定され、また、会社の使用人が代理人の資格を併存することは法的に可能である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年7月頃から本件土地を使用していたが、被上告会社はこれを一時的使用として許諾したに過ぎなかった。上告人は本件土地の賃借を希望し…