判旨
土地の使用が一時的なものに過ぎない場合、賃貸借契約の成立は否定され、また、会社の使用人が代理人の資格を併存することは法的に可能である。
問題の所在(論点)
1. 賃料名目での金銭交付があった場合に、直ちに賃料についての合意(賃貸借契約)が成立したといえるか。 2. 会社の「使用人」である者が、同時に会社の「代理人」となることができるか。
規範
賃貸借契約の成立には、当事者間において賃料支払に関する合意が必要であり、単なる金銭の交付があったとしても、直ちに賃料についての合意があったとは認められない。また、会社の使用人が同時に会社の代理人としての資格を併存することは妨げられない。
重要事実
上告人は、昭和25年7月頃から本件土地を使用していたが、被上告会社はこれを一時的使用として許諾したに過ぎなかった。上告人は本件土地の賃借を希望し、同年12月に賃料名目で2万円を会社の従業員Dに支払ったが、被上告会社はその受領を拒絶し、Dを通じて返還させた。上告人は、賃貸借契約の成立や信義則違反、使用人と代理人の資格併存の否定を主張して上告した。
あてはめ
1. 事実経過によれば、上告人が賃料として2万円を支払ったものの、被上告会社は直ちに受領を拒絶し返還させている。この事実から、当事者間に賃料についての合意が成立したとは認められず、一時的使用の範囲を超えて賃貸借契約が成立したとはいえない。 2. 法律上の資格として、会社に使用される立場(使用人)であることと、会社を代理する権限(代理人)を持つことは論理的に両立可能であり、一方の資格があるからといって他方の資格を否定する根拠にはならない。
結論
1. 賃料の合意がないため賃貸借契約は成立していない。 2. 使用人と代理人の資格は併存し得る。以上より、上告棄却。
事件番号: 昭和30(オ)125 / 裁判年月日: 昭和31年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の使用承諾が特定の個人の再起を目的としてなされた場合、その承諾の効力は、当該個人と共同経営関係にあった他者に当然に及ぶものではない。また、地代受領証の宛名に共同名義が記載されている事実のみをもって、直ちに賃貸借契約の当事者を推断することはできない。 第1 事案の概要:上告人Aは、被上告会社との…
実務上の射程
賃貸借契約の成否に関する事実認定の枠組みを示す。特に「一時的使用」の認定や、金銭交付の事実のみでは賃料合意を認めない実務判断を裏付ける。また、商法・民法上の代理権の帰属において、使用人属性が代理権を排斥しないことを確認する際に参照される。
事件番号: 昭和31(オ)1022 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の占有者が土地所有者から使用許諾を得る際、その条件として建物を無償譲渡した場合であっても、それが土地使用の対価や権利金に代わるものといえない特段の事情があれば、当該土地貸借は賃貸借ではなく使用貸借と解するのが相当である。 第1 事案の概要:訴外会社Dは、以前から本件土地を占有使用していたが、所…
事件番号: 昭和30(オ)297 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
土地所有者が、その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し、賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に、契約の当初、右土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷地となることに決定していたため、賃貸人は、右区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し、残りの部分について…
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…