判旨
土地の占有者が土地所有者から使用許諾を得る際、その条件として建物を無償譲渡した場合であっても、それが土地使用の対価や権利金に代わるものといえない特段の事情があれば、当該土地貸借は賃貸借ではなく使用貸借と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
土地使用の許諾に際して建物を譲渡した事実がある場合に、当該土地貸借契約が対価性を有する「賃貸借」にあたるか、あるいは無償の「使用貸借」にあたるか。
規範
契約の性質が賃貸借(民法601条)か使用貸借(同法593条)かは、名目のみならず、契約成立の経緯、対価支払の有無、当事者の真意を総合的に考慮して判断すべきである。特に資産の譲渡が伴う場合、それが「使用の対価(賃料)」としての実質を有するか、あるいは「使用許諾を得るための代償(贈与)」に留まるかを、当事者の利害関係や従前の占有状況に照らして画定する。
重要事実
訴外会社Dは、以前から本件土地を占有使用していたが、所有者である被上告人から引き続き土地を使用する許諾を得るため、その条件として、土地上の建物を被上告人に譲渡する旨を合意した。上告人らは、この建物譲渡が土地使用の対価(権利金等)にあたり、本件契約は賃貸借であると主張した。
あてはめ
本件において、会社Dが建物を譲渡した経緯は、以前から占有していた土地の使用をひたすら継続したいという動機に基づき、その許可を得るための条件としてなされたものである。この建物の譲渡は、土地使用の対価や権利金の支払に代わる性質を持つものではなく、単に使用許可を得るための代償として贈与されたものと認められる。また、本件貸借は臨時的・暫定的なものという側面もあり、賃料の発生を前提とする賃貸借の合意があったとはいえない。
結論
本件土地の貸借は使用貸借と認められる。したがって、賃貸借であることを前提とする上告人の主張は採用できない。
事件番号: 昭和30(オ)425 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の使用が一時的なものに過ぎない場合、賃貸借契約の成立は否定され、また、会社の使用人が代理人の資格を併存することは法的に可能である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年7月頃から本件土地を使用していたが、被上告会社はこれを一時的使用として許諾したに過ぎなかった。上告人は本件土地の賃借を希望し…
実務上の射程
契約書の記載だけでなく、事実上の占有者が地位を安定させるために行う資産の差し出しが「賃料」に該当するかを判断する際の基準となる。実務上は、建物譲渡の経済的価値と土地使用期間の均衡、及び「使用の対価」としての合意の有無が、使用貸借と賃貸借を分けるメルクマールとなる。
事件番号: 昭和31(オ)952 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用目的の借地権」に該当するか否かは、契約期間の長短のみならず、土地の性格、賃貸借の目的、更新の経緯等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人Aは、鉄道用地(本件土地)を1年の約定で賃借した。期間経過後も継続使用を希望したため、被上告人は急ぎの…
事件番号: 昭和36(オ)220 / 裁判年月日: 昭和36年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】仮設建物所有を目的とした土地賃貸借について、その実態が一時使用目的であることが明らかな場合には、借地法の適用を受けない一時使用目的の借地権(借地借家法25条参照)として認められる。 第1 事案の概要:本件土地賃貸借は、仮設建物を所有することを目的として締結された。賃貸借期間の終了後、被上告人(賃貸…
事件番号: 昭和32(オ)1075 / 裁判年月日: 昭和35年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借に付随して、その敷地ではない隣接宅地を資材置場等として使用させる契約が締結された場合、当該宅地の使用権は借地法の適用を受けず、建物賃貸借の終了とともに消滅する。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、賃貸人(被上告人)から本件建物を借りる際、併せて本件宅地を営業用のドラム缶や魚網等の置…
事件番号: 昭和31(オ)582 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合員が組合の共同事業のために買い受けた土地は、登記名義にかかわらず組合財産として組合員の共有に属するが、他の組合員全員が持分を放棄し特定の組合員の単独所有とすることを承認した場合には、当該組合員の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、D、Eの3名は、アイスケーキ製造販売の共同事業(組合…