判旨
建物の賃貸借に付随して、その敷地ではない隣接宅地を資材置場等として使用させる契約が締結された場合、当該宅地の使用権は借地法の適用を受けず、建物賃貸借の終了とともに消滅する。
問題の所在(論点)
建物賃貸借に付随して締結された、資材置場目的(簡易な工作物の設置を含む)の土地賃貸借について、借地法の適用があるか。また、主たる建物賃貸借が終了した場合に従たる土地使用権も消滅するか。
規範
建物賃貸借に付随してなされた宅地の賃貸借において、その使用目的が営業用資材(ドラム缶、魚網等)の置場としての利用に限定され、かつ置場雨覆のためのバラック設置といった限定的な使用が許容されているに過ぎない場合には、借地法(現:借地借家法)の適用を受ける「建物の所有を目的とする土地の賃貸借」には該当しない。この場合、当該土地使用権は主たる建物賃貸借に従属するものと解され、建物賃貸借の終了に伴い当然に消滅する。
重要事実
賃借人(上告人)は、賃貸人(被上告人)から本件建物を借りる際、併せて本件宅地を営業用のドラム缶や魚網等の置場として賃借した。その際、長期間の賃貸は困難であるとの事情から、期間を5年と限定し、本件宅地の使用は置場雨覆のためのバラック建築に限って許容するという特約が付された。その後、建物の賃貸借契約が終了したため、賃貸人は宅地の返還も求めたが、賃借人は宅地使用権が借地法上の保護を受けるべきであると主張して争った。
あてはめ
本件宅地の賃貸借は、建物賃貸借に際して付随的に成立したものであり、その目的はあくまで営業用資材の置場確保にある。バラックの設置は認められているものの、それは置場としての利用を補完する「雨覆」目的に限定されており、恒久的な建物所有を目的とするものではない。したがって、借地法の適用を肯定すべき独立した借地権の設定とは認められない。主たる契約である建物賃貸借が終了した以上、その附随的合意に基づく土地使用権も、別段の合意がない限りその存続基盤を失うと評価される。
結論
本件宅地賃貸借には借地法の適用はなく、建物賃貸借の終了により、本件宅地の使用権も当然に消滅する。
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…
実務上の射程
土地上の建物が「仮設物」や「付随的工作物」に過ぎない場合に、借地借家法の適用を否定する際の有力な論拠となる。実務上は、土地の使用目的が主たる建物賃借の利便性向上にあるのか、それとも独立した建物所有にあるのかを、設置物の構造や契約の経緯から判別する際の指標として用いる。
事件番号: 昭和31(オ)1022 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の占有者が土地所有者から使用許諾を得る際、その条件として建物を無償譲渡した場合であっても、それが土地使用の対価や権利金に代わるものといえない特段の事情があれば、当該土地貸借は賃貸借ではなく使用貸借と解するのが相当である。 第1 事案の概要:訴外会社Dは、以前から本件土地を占有使用していたが、所…
事件番号: 昭和32(オ)399 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したからといって、当然に土地の使用収益の目的(民法597条2項但書、現598条2項)が定められたと解すべきではない。 第1 事案の概要:上告人は、借主所有の建物が現存する土地について使用貸借が成立したと主張した。その上で、建物が存在する以上、土地の…
事件番号: 昭和30(オ)297 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
土地所有者が、その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し、賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に、契約の当初、右土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷地となることに決定していたため、賃貸人は、右区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し、残りの部分について…
事件番号: 昭和31(オ)952 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用目的の借地権」に該当するか否かは、契約期間の長短のみならず、土地の性格、賃貸借の目的、更新の経緯等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人Aは、鉄道用地(本件土地)を1年の約定で賃借した。期間経過後も継続使用を希望したため、被上告人は急ぎの…