判旨
土地の使用承諾が特定の個人の再起を目的としてなされた場合、その承諾の効力は、当該個人と共同経営関係にあった他者に当然に及ぶものではない。また、地代受領証の宛名に共同名義が記載されている事実のみをもって、直ちに賃貸借契約の当事者を推断することはできない。
問題の所在(論点)
特定の個人の再起を目的とした土地の使用承諾がある場合に、その個人と共同経営関係にある他者(上告人A)に対しても、当該土地の賃貸借関係の成立を認めることができるか。また、共同名義の地代受領証が契約当事者の認定に与える影響が問題となる。
規範
契約当事者の確定は、契約締結の経緯、目的、および当事者の意思表示を総合的に考慮して判断される。特定の個人の救済を目的とする使用承諾は、特段の事情がない限り、その個人に限定されたものであり、他者との共同経営を当然に許容するものではない。また、証拠としての受領証の記載は、客観的な契約関係と合致しない場合もあり、直ちに契約の成立を裏付けるものではない。
重要事実
上告人Aは、被上告会社との間で本件土地の賃貸借関係が成立していると主張した。原審の認定によれば、土地所有者DがEに対し土地の使用を承諾したのは、戦災に遭ったEの再起を助けるためであった。Aは、Eと以前から鉄工業を共同経営していたことから、自分も使用を許諾された当事者であると主張し、その根拠として、自分と被上告会社の両名が宛名となった地代受領証が存在することを挙げた。
あてはめ
本件において、Dによる使用承諾はあくまでE個人の罹災後の再起を支援する目的でなされたものである。AがかつてEと鉄工業を経営していた事実はあるものの、DがAに対しても使用を認めたという事実は認められない。地代受領証の宛名がAと被上告会社の連名になっていたとしても、その事実だけで直ちにAとの間に賃貸借契約が締結されたと推断することは、取引の経験則に照らして妥当ではない。したがって、Aを賃借人と認める余地はない。
結論
上告人Aを賃借人と認めることはできず、上告は棄却される。地代受領証の宛名のみから賃貸借関係の成立を推断することはできない。
事件番号: 昭和30(オ)425 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の使用が一時的なものに過ぎない場合、賃貸借契約の成立は否定され、また、会社の使用人が代理人の資格を併存することは法的に可能である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年7月頃から本件土地を使用していたが、被上告会社はこれを一時的使用として許諾したに過ぎなかった。上告人は本件土地の賃借を希望し…
実務上の射程
契約当事者の確定に関する事実認定の射程を示す。特に、好意的な動機(罹災救済等)に基づく使用許諾の場合、当事者の範囲は限定的に解釈されやすい。また、書証(受領証)の形式的な記載内容よりも、実質的な合意の有無が重視されることを示唆しており、認定における経験則の適用例として機能する。
事件番号: 昭和35(オ)630 / 裁判年月日: 昭和37年5月25日 / 結論: 棄却
催告の過大が特に著しい程度でなく、支払義務のある限度の弁済の提供に対する債権者の受領拒絶も考えられない事情のもとでは、過大催告は必しも無効でない。
事件番号: 昭和33(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物を共有して土地を不法占有する者は、共同不法占有者の一人として、他の共有者の有無にかかわらず土地全体を明け渡す義務を負う。この場合、判決の既判力が他の共有者に及ばないことは、当該共有者に対する明渡し請求の可否に影響しない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dほか1名と本件建物を共有し、当該建物の…
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
事件番号: 昭和31(オ)970 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借権の譲渡について賃貸人の承諾を得られなかった場合であっても、譲受人は地上建物の処分権を失わず、賃貸人に対し建物買取請求権を行使できる。 第1 事案の概要:上告人は土地の賃借権を譲り受けたが、賃貸人である相手方から当該譲渡についての承諾を得ることができなかった。上告人は、承諾が得られないこと…