判旨
行政処分の適否は、その処分がなされた時点の事実状態を基礎として判断されるべきであり、処分後の事情の変化を考慮してその適否を判断することはできない。
問題の所在(論点)
行政処分の適否を判断する基準時はいつか。特に、処分後に生じた事情の変化が処分の適否に影響を及ぼすか、および自創法に基づく買収処分の適否が争点となった。
規範
行政処分の違法性は、原則として処分時における事実状態及び法律状態に基づいて判断される。処分後の事情の変化によって、遡及的に処分の適否が左右されることはない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づき、昭和25年12月8日に本件宅地の買収処分がなされた。上告人は、原審が処分後の環境変化のみを判示した点に違法があると主張し、また本件買収処分が同法15条2項3号の要件に該当しないと主張して上告した。
あてはめ
原判決は、本件買収令書が被上告人に交付された昭和25年12月8日当時までの事情を基礎として、本件買収処分の適否を判断している。当時の本件宅地の位置や環境等に照らせば、処分時を基準とした原審の判断に違法はない。処分後の環境変化は、処分自体の適否を左右するものではないと解される。
結論
行政処分の適否は処分時の事実に基づいて判断されるべきであり、原判決の判断は正当である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政事件訴訟法における取消訴訟の判決基準時(処分時説)を確認した初期の判例の一つ。事情判決(行訴法31条)の場面を除き、処分後の事実関係の変化は原則として処分の適法性に影響しないことを示す際に引用できる。
事件番号: 昭和37(オ)555 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
訴願書がその方式において欠くるところがあるとして補正すべき期限を指定し還付されたのに、訴願人がその欠缺の補正に応じなかつた場合においては、関係行政庁は訴願の提起がなかつたものとして取り扱うことができると解すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)412 / 裁判年月日: 昭和28年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟における処分の違法性は、処分当時の事実状態に基づいて判断すべきであり、口頭弁論終結時までの事情の変動を考慮してその当否を判断することはできない。また、自作農創設特別措置法15条1項2号の附帯買収は、場所的・機能的附随性は不要であるが、売渡農地の経営に必要であることが要求される。 …
事件番号: 昭和37(オ)661 / 裁判年月日: 昭和38年12月20日 / 結論: 棄却
農地買収計画の適否は、当該計画樹立当時の状況において判断すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定における証拠の取捨選択は裁判所の自由裁量に委ねられており、引用された証拠から認定事実が導き出せる限り、採証法則違反の違法は認められない。 第1 事案の概要:農地遡及買収の基準日(昭和20年11月23日)時点における本件農地の所有者が誰であったかが争点となった事案である。原審は、証拠に基づき…
事件番号: 昭和28(オ)1347 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、却下裁決がなされた場合には、訴願前置主義の下ではもはや原処分の当否を争う取消訴訟を提起することはできない。 第1 事案の概要:本件買収計画が昭和23年9月2日に定められ、同月3日から12日まで縦覧に供された。上告人がこれに対し異議…