判旨
行政処分の取消訴訟における処分の違法性は、処分当時の事実状態に基づいて判断すべきであり、口頭弁論終結時までの事情の変動を考慮してその当否を判断することはできない。また、自作農創設特別措置法15条1項2号の附帯買収は、場所的・機能的附随性は不要であるが、売渡農地の経営に必要であることが要求される。
問題の所在(論点)
1. 行政処分の違法性を判断する基準時期は、処分時か、あるいは口頭弁論終結時か。 2. 自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく附帯買収において、農地と宅地建物との間に場所的・機能的な附随性が必要か、またその買収要件として何が求められるか。
規範
1. 行政処分の取消訴訟において、裁判所が処分を取り消すのは処分の違法性を確認してその効力を失わせるものである。したがって、裁判所が行政庁の立場に立って処分の正当性を判断するものではなく、弁論終結時までの事実を参酌して当初の処分の当否を判断すべきではない(処分時標準主義)。 2. 自作農創設特別措置法15条1項2号の附帯買収は、耕作者の地位の安定を目的とするため、買収対象の宅地建物が場所的・機能的に売渡農地に附随している必要はない。しかし、農地売渡に附帯するものである以上、売渡農地の経営に必要であることが必要であり、単に農業経営全般に必要であるだけでは足りない。
重要事実
訴外Dは、自作農創設特別措置法に基づき、自身が耕作する全農地の約半分にあたる2反9畝20歩の農地の売渡しを受けた。これに伴い、Dが賃借権等を有する本件宅地建物について、同法15条1項2号に基づき附帯買収がなされた。上告人は、本件宅地建物と売渡農地が約10町(約1.1km)離れており附随性がないこと、および買収計画後の事情変動を考慮すべきであることを理由に、買収処分の違法を主張してその取消しを求めた。
あてはめ
1. 行政処分の取消訴訟の本質は処分時点の違法性を確認することにある。判決時の事情変動を考慮して処分を維持・取消すべきとの主張は、裁判所が行政庁の立場で正当性を判断することに等しく、許されない。 2. 附帯買収においては、場所的離隔(約10町)があっても直ちに違法とはならない。本件では、売渡農地がDの耕作する全農地の半数近くを占めていることから、本件宅地建物は農業経営全般に必要であるだけでなく、「売渡農地の経営にも必要」であると評価できる。したがって、本件買収は附帯買収の性質に反しない。
結論
本件上告を棄却する。買収処分の適否は処分当時の事実により判断すべきであり、本件買収は売渡農地の経営に必要なものとして適法である。
実務上の射程
行政処分の違法性判断基準時(処分時標準主義)に関するリーディングケースである。答案上では、取消訴訟において処分後の事情変更を理由に処分の適法性を争う(または維持する)主張の当否を論ずる際の根拠として用いる。また、附帯買収の要件については、制度趣旨から必要性を画定する解釈手法の参考となる。
事件番号: 昭和26(オ)402 / 裁判年月日: 昭和28年4月3日 / 結論: 棄却
地主の家族は七名で耕作面積は係争農地を含めて二町四反余であり、居村では最上層部に位する農家であるのに対し、小作人は小作人として不誠実の点もなく約三〇年前から右農地を耕作して来、その家族は五名で耕作面積は僅かに五反歩に過ぎない場合は、合意によつて賃貸借を解約しても、その解約は自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号のい…