訴願書がその方式において欠くるところがあるとして補正すべき期限を指定し還付されたのに、訴願人がその欠缺の補正に応じなかつた場合においては、関係行政庁は訴願の提起がなかつたものとして取り扱うことができると解すべきである。
訴願人が指定された期限までに訴願書の欠缺の補正に応じなかつた場合における訴願提起の効力。
訴願法9条2項,自作農創設特別措置法8条,自作農創設特別措置法9条1項
判旨
行政処分の際に根拠法条を明示することは、特段の定めのない限り処分の有効要件ではない。また、訴願の方式に欠缺があり、指定された期限内に補正がなされない場合には、行政庁は訴願の提起がなかったものとして取り扱うことができる。
問題の所在(論点)
1. 行政処分において根拠法条の明示が処分の有効要件となるか。2. 方式に不備がある訴願に対し、補正命令に従わなかった場合の不服申立ての効力はどうなるか。
規範
行政処分の成立において、処分の根拠となる法条を具体的に明示することは、法律に特別の定めがある場合を除き、処分の有効要件ではない。また、不服申立て(訴願)の手続に不備がある場合、行政庁が期限を定めて補正を命じたにもかかわらず、申立人がこれに応じないときは、当該不服申立てはなされなかったものとみなして処分を確定させることができる。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法に基づきなされた宅地買収処分について、以下の2点を理由に違法を主張した。第一に、買収計画樹立通知書に同法15条だけでなく、本来不要な3条が根拠法条として併記されていた点。第二に、本件処分に対し訴願を提起したにもかかわらず、これが無視されて処分がなされた点である。事実経過として、上告人は県農地委員会に直接訴願書を郵送したが、適法な経由手続を欠いていたため、委員会は期限を定めて補正を命じ、書類を還付した。しかし、上告人は期限内に補正を行わなかった。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
あてはめ
1. 根拠法条の明示について:自作農創設特別措置法15条2項に基づく宅地買収において、通知書に誤って他条文(3条)が併記されていたとしても、法条の明示自体が処分の成立要件ではない以上、その記載の有無や誤記によって直ちに処分の効力が否定されることはない。2. 訴願の効力について:上告人は原処分庁を経由せず直接県委員会に訴願を郵送するという方式違反を犯している。これに対し、委員会が補正期限を指定して書類を還付したにもかかわらず、上告人が欠缺を補正しなかった以上、行政庁が「訴願の提起がなかったもの」として取り扱い、処分を進めることに違法はない。
結論
本件宅地買収処分は有効である。根拠法条の誤記や併記は処分の効力を左右せず、また、補正命令に従わない訴願は適法な不服申立てとして存続しない。
実務上の射程
行政処分の理由提示(行政手続法8条、14条)が厳格化された現代においては、本判決の「根拠法条の明示不要」という法理は限定的に解釈されるべきであるが、不服申立てにおける補正命令の無視が「不適法」として扱われる点は、現行の行政不服審査法(23条、45条1項等)における運用の準拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)660 / 裁判年月日: 昭和32年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の適否は、その処分がなされた時点の事実状態を基礎として判断されるべきであり、処分後の事情の変化を考慮してその適否を判断することはできない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、昭和25年12月8日に本件宅地の買収処分がなされた。上告人は、原審が処分後の環境変化のみを判示した点に…
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和35(オ)1265 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: 棄却
買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分も、当然無効ではない。