判旨
共同不法行為者の一人が損害賠償として金員を支払った場合でも、被害者が当該加害者に対して残余の損害賠償債務を免除した事実が認められない限り、他の共同不法行為者に対する賠償請求は妨げられない。
問題の所在(論点)
共同不法行為者の一人が被害者に金員を支払った場合、被害者がその加害者に対して損害賠償債務を免除したと認められない限り、他の共同不法行為者も免責されるか(共同不法行為における免除の効力の範囲)。
規範
共同不法行為者の一人が被害者に対して一定の金員を支払ったとしても、被害者がその支払に関連して当該加害者に対し、不法行為に基づく一切の損害賠償債務を免除したと認められない限り、他の共同不法行為者の賠償責任は消滅しない(民法719条1項前段、連帯債務の相対的効力の原則)。
重要事実
上告人は、訴外Dと共に被上告人に対する不法行為(不貞行為等)を行った。共同不法行為者であるDは、被上告人との離婚に際して金3万円を交付した。上告人は、この金員の交付により離婚が完了した以上、被上告人の上告人に対する慰謝料請求は不当であると主張し、Dの支払によって賠償債務が消滅した、あるいは免除された旨を争った。
あてはめ
本件において、訴外Dが被上告人に金3万円を交付した事実は認められる。しかし、その際、被上告人がDに対し、本件の姦通行為による一切の損害について賠償債務を免除した事実は証拠上認められない。したがって、債務免除の事実がない以上、連帯債務者の一人であるDの行為によって、当然に他の連帯債務者である上告人の賠償義務が消滅したということはできない。
結論
被上告人の上告人に対する慰謝料請求は認められる(上告棄却)。
実務上の射程
共同不法行為における一部債務者の弁済や和解が、他の債務者に及ぼす影響を検討する際の基礎となる。当事者間に「一切の債権債務関係を清算する」等の免除の合意がない限り、相対的効力にとどまることを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)550 / 裁判年月日: 昭和33年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】配偶者のある者と不貞行為を行った第三者は、他方配偶者が不貞を黙認・挑発したなどの特段の事情がない限り、不法行為責任を負う。他方配偶者の不貞や監督不十分といった事由は、賠償額を定める際の過失相殺の対象となり得るにとどまり、責任そのものを否定する根拠にはならない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人…