婚姻破綻の責が主として夫にあり、離婚が夫の不当な強要によると判断された事例。
判旨
不当な強要による離婚において、低額な慰謝料の支払と引き換えに以後一切の請求をしない旨の書面が差し入れられたとしても、直ちに一切の請求権を放棄したものとは認められない。
問題の所在(論点)
不当な強要による離婚に際して作成された「一切の異議を申し立てない」旨の書面により、離婚に伴う慰謝料請求権等の権利が有効に放棄されたといえるか。
規範
離婚に伴う慰謝料等の請求権放棄の意思表示の有無については、単に書面の文言のみならず、当該書面が作成されるに至った経緯、当事者間の合意の真実性、および合意内容の公序良俗適合性を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
上告人(夫)は、被上告人(妻)に対し、不当な強要により離婚を成立させた。その際、上告人は世間の慣行として自発的に3万円の慰謝料を支払うこととし、被上告人からは「今後このことについて一切異議を申し立てない」旨の書面(乙第1号証)が差し入れられた。被上告人は後に慰謝料等を請求したため、右書面による請求権放棄の成否が争点となった。
あてはめ
本件では、婚姻破綻の責任が主として上告人にあり、離婚自体が上告人の不当な強要によるものであった。このような状況下で作成された書面は、被上告人の真意に基づくものとは言い難い。また、支払われた3万円という金額の妥当性や合意の任意性に疑義がある。原審が「一切の請求権を放棄したものとは認められない」とした判断は、証拠の取捨判断および事実認定として是認できる。
結論
被上告人が一切の請求権を放棄したとは認められず、上告人の請求権放棄の主張は採用できない。
事件番号: 昭和30(オ)899 / 裁判年月日: 昭和32年4月11日 / 結論: 棄却
妻が有効に離婚が成立したものと信じて、他の男子と婚姻をなした後、先夫から前婚についての離婚無効確認および後婚についての婚姻取消の訴を提起せられ、右各訴はいずれも妻の敗訴に確定した場合であつても、前婚につき、婚姻を継続し難い重大な事由があることを理由として、妻が離婚の訴を提起することを妨げるものではない。
実務上の射程
離婚給付の合意や清算条項の有効性が争われる場面で、合意形成過程に強迫や不当な干渉がある場合の判断指針となる。形式的な合意書があっても、実質的に公序良俗や信義則に反する事態(不当な強要等)がある場合には、放棄の効力を否定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)628 / 裁判年月日: 昭和32年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同不法行為者の一人が損害賠償として金員を支払った場合でも、被害者が当該加害者に対して残余の損害賠償債務を免除した事実が認められない限り、他の共同不法行為者に対する賠償請求は妨げられない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dと共に被上告人に対する不法行為(不貞行為等)を行った。共同不法行為者である…