信仰の相異を主たる理由として内縁関係が破棄されたときでも、判示および原判決理由説示の事実関係のもとにおいては、破棄について正当な事由があるとはいえない。
信仰の相異を主たる理由とする内縁の破棄と正当事由の有無。
民法709条,民法第4編第2章第1節
判旨
内縁の解消における不法行為責任の成否に関し、特定の宗教への信仰や信仰活動を理由とする内縁関係の破棄は、それが相手方の信仰生活または社会生活に対する直接の侵害に至らない限り、正当な理由に基づくものとはいえない。
問題の所在(論点)
特定の宗教への信仰または信仰活動を理由として内縁関係を解消することが、民法上の不法行為(内縁の不当破棄)における「正当な理由」にあたるか。
規範
内縁関係の不当破棄による損害賠償責任が認められるか否かは、当該破棄に「正当な理由」があるかによって決せられる。特定の宗教に対する信仰や活動を理由に内縁を解消する場合、その活動が他方の信仰生活または社会生活に対する直接の侵害を構成する程度の客観的事態に至っていない限り、破棄の正当事由は認められない。
重要事実
上告人A1と被上告人は内縁関係にあった。A1は、被上告人がDの信仰をやめないことを理由に内縁関係を破棄した。また、共同被告である上告人A2(A1の親族と推察されるが詳細は判決文からは不明)は、被上告人の信仰活動が自身の許容限度を超え、同居の父母とのあつれきを増すことを理由として、A1と共に内縁関係を破棄した。
あてはめ
被上告人の信仰活動について検討するに、本件における被上告人の所為は、いまだ上告人らの信仰生活または社会生活に対する直接の侵害とまでは評価できない。A2が主張する「許容限度の超過」や「父母とのあつれき」という事実も、客観的にみて内縁関係を維持し難いほどの直接的侵害には至っていない。したがって、信仰のみを理由とする破棄は正当化されない。
結論
本件内縁関係の破棄は正当事由に基づくものとはいえず、上告人らの行為は不当破棄として不法行為を構成する。
実務上の射程
憲法20条の信教の自由を背景としつつ、家族法上の関係解消における正当事由の判断枠組みを示している。信仰内容そのものではなく、それが他者の生活に及ぼす「直接の侵害」の有無を基準とする点は、離婚事由(民法770条1項5号)の判断においても応用可能な射程を有している。
事件番号: 昭和37(オ)1008 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】内縁関係の一方的かつ信義誠実に著しく欠ける解消は、不法行為を構成し、慰謝料支払義務を負わせる。内縁を正当な理由なく破棄した者は、相手方が被った精神的苦痛を賠償すべき責任がある。 第1 事案の概要:上告人と被上告人は内縁関係にあったが、上告人は一方的な意思によってこの関係を解消した。その解消の態様は…