一 内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し不法行為を理由として損害の賠償を求めることができる 二 民法第七六〇条の規定は、内縁に準用されるものと解すべきである
一 内縁不当破棄と不法行為の成否 二 内縁に民法第七六〇条の規定は準用されるか
民法709条,民法760条
判旨
内縁は婚姻に準ずる関係として法律上保護されるべき利益であり、正当な理由のない破棄は不法行為(民法709条)を構成するとともに、婚姻費用の分担(同法760条)の規定が準用される。
問題の所在(論点)
1. 内縁の不当破棄が民法709条の不法行為を構成するか。 2. 法律上の婚姻関係にない内縁の当事者間において、民法760条(婚姻費用の分担)が準用されるか。
規範
1. 内縁は婚姻の届出を欠くが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であり、婚姻に準ずる関係として法律上保護されるべき利益(民法709条)にあたる。したがって、正当な理由なく破棄された場合は不法行為責任を負う。2. 内縁には婚姻に関する規定が準用され、婚姻から生ずる費用の分担(民法760条)も内縁関係に準用される。
重要事実
上告人と被上告人は内縁関係にあったが、昭和28年3月に上告人の一方的な意思によって当該関係が破棄された。被上告人は、別居を開始した昭和27年6月から内縁解消時までの間に自己の医療費として合計21万4130円を支出しており、この費用の分担等を求めて提訴した。
あてはめ
1. 内縁は実態において婚姻関係と異ならない「婚姻に準ずる関係」であり、法律上保護されるべき生活関係である。上告人が正当な理由なく一方的にこれを破棄したことは、被上告人の法的利益を侵害するものとして不法行為に該当する。 2. 内縁の性質が婚姻に準ずる以上、その共同生活から生じる費用についても婚姻費用の分担を定めた民法760条を準用すべきである。被上告人が支出した医療費は、別居中に生じたものであっても内縁関係存続中の費用といえ、一切の事情を考慮して上告人がその一部を分担すべきである。
結論
内縁の不当破棄は不法行為を構成し、また内縁存続中の費用(医療費等)については民法760条の準用により相手方に分担を請求できる。
実務上の射程
内縁関係の法的保護の根拠を「婚姻予約(契約)」だけでなく「婚姻に準ずる関係(準婚)」という実態に着目して認めた点に意義がある。答案上は、不当破棄の損害賠償請求において不法行為構成をとる際の根拠、および婚姻費用の分担請求の可否を論じる際の規範として確立した判例である。
事件番号: 昭和34(オ)565 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
不法行為の責任を判定するためにはいかなる権利が侵害されたかの権利の種別を明示することを要しない。