判旨
鉄道係員が貨物の引渡しがないのに虚偽の貨物引換証(空甲片)を発行した場合、これを利用した詐取行為により第三者が損害を被ったときは、係員に過失があれば、当該発行行為と損害との間に相当因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
貨物の引渡しがないのに虚偽の運送引受証(空甲片)を発行した行為と、その後の第三者による詐欺行為によって生じた損害との間に、相当因果関係が認められるか。また、係員に過失が認められるか。
規範
不法行為法上の相当因果関係の存否は、行為時に存在した事情および予見可能であった事情を基礎として判断される。加害行為後に第三者の介在(詐欺行為等)があったとしても、当初の加害行為から当該損害が発生することが客観的に予測可能な範囲内であれば、因果関係は中断されない。また、相手方が文書の真正を信じて金員を支払うことにつき予見可能性が認められる場合には、当該文書の作成者に過失が認められる。
重要事実
鉄道会社の駅貨物係Aは、知人Dから「形式だけでよいから貨物の発送を証明する甲片を出してくれ」との請託を受けた。Aは、貨物の現物引渡しがない(空の状態である)にもかかわらず、通常記入しない貨車番号まで記載した「空甲片」2通を発行した。Dらはこの空甲片をE農業会に提示し、貨物が発送されたものと信じ込ませ、代金の内払金として100万円を詐取した。Eは、空甲片の発行者であるAおよびその雇用主である鉄道会社に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した。
あてはめ
Aは、Dらが発送の証明として本件空甲片を使い、Eから代金を受け取ることを知りながら、あえて貨車番号まで記入して本件文書を発行した。甲片は運送のために貨物が引き渡されたことを証明する重要文書であり、これを信じた第三者が代金を支払うことは、相当の注意を払えば予見可能であったといえる。したがって、Aには過失が認められる。また、その後のFらによる詐欺行為が介入したとしても、それは空甲片の性質上予見された範囲内の出来事であり、Aの行為とEの損害との間の因果関係を中断させるものではない。
結論
Aの空甲片発行行為とEの損害との間には相当因果関係が認められ、Aの過失も否定されない。したがって、Aおよび鉄道会社はEに対して損害賠償責任を負う。
実務上の射程
虚偽の証明書発行(空ハネ)に関するリーディングケース。第三者の故意過失が介在する場合でも、当初の過失行為によりその介入が誘発される関係にあれば、因果関係は否定されないとする実務の基礎となる。
事件番号: 昭和36(オ)171 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
貨物引換証の発行のない場合において、運送品が到達地に達した後は、運送取扱人は、運送取扱委託者との合意がなくても、荷受人から荷受権限の移転を受けた者に対し運送品を引き渡すことによつて、債務の本旨に従つた履行ができる。