貨物引換証の発行のない場合において、運送品が到達地に達した後は、運送取扱人は、運送取扱委託者との合意がなくても、荷受人から荷受権限の移転を受けた者に対し運送品を引き渡すことによつて、債務の本旨に従つた履行ができる。
運送品到達の荷受人の荷受権限の移転に運送取扱委託者との合意が必要か。
商法568条,商法583条1項
判旨
貨物引換証が発行されていない運送において、運送取扱人は、荷受人から引渡請求の権限を与えられた第三者に対して運送品を引渡すことにより、委託者との合意がなくとも債務の本旨に従った履行をしたものと認められる。
問題の所在(論点)
貨物引換証が発行されていない運送において、運送取扱人が、荷受人から権限を授与された第三者に対して運送品を引渡した場合、委託者との合意がなくとも「債務の本旨に従った履行」といえるか。
規範
貨物引換証が発行されていない場合、運送品が到達地に達した後は、荷受人は運送取扱契約によって生じた委託者の権利を取得する(商法568条、583条1項準用)。この荷受人の権利に基づき、荷受人から引渡請求の権限を授与された者に対して運送品を引渡すことは、債務の本旨に従った履行となる。その際、引渡請求権限の授与について委託者との合意は不要であり、運送取扱人が受領権限の有無を調査したか否かは履行の有効性に影響しない。
重要事実
委託者である上告人は、運送取扱人である被上告人に対し、D農協を荷受人として物品の運送を委託した。本件では貨物引換証は発行されていなかった。運送品が到達地に到着した後、契約上の荷受人であるD農協は、第三者であるE産業に対し、荷受に関する権限を授与した。被上告人は、この権限を与えられたE産業に対して運送品を引渡したが、これについて委託者である上告人の合意は得ていなかった。上告人は、荷受人をE産業に変更する合意がない以上、当該引渡しは債務の本旨に従った履行ではないとして、被上告人の責任を追及した。
あてはめ
本件では、運送品が到達地に達しているため、商法583条1項の準用により、荷受人であるD農協は委託者の権利を取得している。したがって、D農協は独自の権利として引渡請求権を有しており、その権限をE産業に授与することも認められる。被上告人は、D農協から正当に権限を授与されたE産業に対して引渡しを行っており、これは荷受人本人に対する引渡しと同視できる。この権限授与は荷受人と第三者間の法律関係であり、委託者である上告人との合意は法的要件ではない。また、正当な権限を有する者への引渡しが客観的になされた以上、被上告人による調査の成否は履行の有効性を左右しない。
結論
被上告人によるE産業への引渡しは債務の本旨に従った履行であり、被上告人は債務不履行責任を負わない。
実務上の射程
非指図式運送における受領権限の有効性を判断する際の指針となる。荷受人の権利確定(商法583条1項)を根拠として、荷受人の指定した代理人や受領代行者への引渡しが委託者の承諾なく有効であることを認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和35(オ)627 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
運送取扱人から運送品の引渡を受けた者が売買の履行としてこれを真荷受人に引渡した事実があつても、運送取扱契約の本旨に従つた荷受人に対する運送品引渡の履行があつたとはいわれない。