運送取扱人ないし運送人が、予め発送人に対し通知もせず、その指図も受けないで、運送品を、荷受人でない第三者に引渡した場合は、単に原審認定のような事情(原判決参照)があるだけでは、未だこれを無過失ということはできない。
運送取扱人ないし運送人の行為が無過失といえない一事例
商法560条,商法577条
判旨
運送人が指定荷受人以外の者に物品を引渡した場合は、法律上必要な注意義務を尽くしたとは認められない。また、発送人が取引に関係のない者を荷受人に指定したとしても、それだけで発送人に過失があるとは断じられない。
問題の所在(論点)
運送人が指定荷受人以外の者に物品を引渡した場合の注意義務違反の有無、および発送人が取引に関係のない者を荷受人に指定したことが過失(過失相殺等の対象)に該当するか。
規範
物品運送において、運送人は指定された荷受人に物品を引渡すべき義務を負う。また、発送人が何人を荷受人に指定するかは発送人の自由であり、取引関係のない者を指定した事実のみをもって直ちに発送人の過失(過失相殺の基礎となる事実)と認めることはできない。
重要事実
運送取扱人または運送人である上告会社は、物品運送の委託を受けたが、指定荷受人であるD組合に物品を引渡さず、荷受人ではない第三者(E紙業有限会社代表者F)に対して物品を引渡した。これに対し、損害賠償請求権の譲受人である被上告人が上告会社に対して損害賠償を求めた。上告会社は、指定荷受人が取引に関係のない者であったこと等を理由に、発送人側の過失等を主張した。
あてはめ
上告会社は、指定荷受人ではない者に物品を引渡しており、諸般の事実関係を考慮しても、運送人として法律上必要な注意義務を尽くしたものとはいえない。また、荷受人の指定は発送人の自由であるから、単に取引関係のない者を荷受人に指定したという事実だけでは、発送人に過失があると断ずることはできない。さらに、被上告人は請求権の譲受人にすぎず、契約当事者ではないため、被上告人自身の過失は契約不履行に基づく損害賠償請求権に影響しない。
結論
上告会社の注意義務違反が認められ、発送人の荷受人指定に関する過失も否定されるため、上告会社の損害賠償責任を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
運送人の引渡義務の厳格性を確認する裁判例である。答案上は、誤配送が発生した場合の運送人の債務不履行責任の要件検討において、指定荷受人以外への引渡しを注意義務違反と認定する際の根拠となる。また、過失相殺の抗弁において、荷受人の選定の自由を理由に発送人側の過失を限定的に解釈する際にも活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)993 / 裁判年月日: 昭和35年3月17日 / 結論: 破棄差戻
運送人甲の使用人乙が、かつて荷受人を天草郡a町丙(設立準備中の有限会社)とする物品運送に従事した際、丙の設立事務所に目的物を運送したことがあるにもかかわらず、約一ケ月後に締結された右と同様の荷受人の表示がある運送契約において、運送品を丁の指示に従い同人の居宅に配達してこれを滅失させたときは、前記設立事務所にはこれを示す…