商品取引所の取引員が委託者の指図に基づかないで建玉の反対売買をしたときは、委託者としては指図による反対売買により得べかりし利益を喪失し、これと同額の損害を被ることがありうる。
商品取引所の取引員が委託者の指図に基づかないで建玉の反対売買をした場合と委託者の損害
商法551条,商法552条2項
判旨
商品取引所の取引員(問屋)が委託者の無断で反対売買をした場合、取引自体は有効であり、委託者は外務員の不法行為に基づく損害賠償を請求できる。また、取引員に対する債務不履行責任と外務員に対する不法行為責任は競合して成立する。
問題の所在(論点)
取引員の受託に基づかない無断売買が行われた場合において、委託者は当該取引の無効(建玉の存続)を主張すべきであり、外務員に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することはできないのか。また、取引員への債務不履行請求の可否が、外務員への不法行為請求を妨げるか。
規範
1. 商品取引員は法律上の問屋であり、自己の名で取引を行うため、委託者の指図に基づかない取引であっても、取引自体は法律上の効力を生じる。 2. 委託者は取引員との関係で計算の帰属を否認し得るが、取引自体を無効とすることはできない。そのため、無断での反対売買により利益喪失等の損害が生じた場合、外務員の不法行為に基づく損害賠償請求が可能である。 3. 取引員に対する債務不履行責任と外務員に対する不法行為責任は、請求原因事実を異にするため、競合して発生し得る。
重要事実
上告人(委託者)は、商品取引員の訴外会社に対し、外務員である被上告人を介して小豆の買建玉を依頼し、証拠金を差し入れた。しかし、被上告人は上告人の承諾がないにもかかわらず、承諾があったかのように訴外会社に虚偽の報告を行い、計8回にわたる無断売買等(反対売買)を行わせた。上告人は、本来得られたはずの利益および証拠金相当額の損害を被ったとして、被上告人に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した。
事件番号: 平成12(受)67 / 裁判年月日: 平成13年6月11日 / 結論: 破棄差戻
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継…
あてはめ
被上告人の虚偽報告により訴外会社が行った反対売買は、問屋取引として有効に成立し、これによって上告人の買建玉は決済・消滅する。訴外会社が上告人の本来の指図に応じない限り、上告人は当該反対売買によって得べかりし利益を喪失するという現実の損害を被る。この損害は、被上告人の虚偽報告という不法行為によって生じたものといえる。また、訴外会社に対して債務不履行責任を追及できるとしても、不法行為責任とは要件を異にするため、両者は並存し、被上告人への請求が妨げられる理由はない。
結論
委託者は、無断売買を指示した外務員に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できる。原審の「主張自体失当」とする判断は誤りであり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
問屋(商法551条)の取引における計算の帰属と行為自体の有効性を区別する。無断売買がなされた際の委託者の救済手段として、取引相手(取引員)への計算帰属の否認(債務不履行)だけでなく、実行者(外務員)への不法行為責任が競合的に認められることを示す際に用いる。
事件番号: 昭和31(オ)613 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない法的な構成(問屋類似行為)について、裁判所が釈明権を行使してその主張を促す義務があるとはいえない。当事者が主張する媒介または代理の事実に基づき、契約の成立を認めた原審の判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人の媒介または代理行為によって上告人とDセメント株式会…