判旨
賃貸借契約が相手方の欺罔行為による営業権の騙取を目的としてなされたとは認められない場合、共同不法行為の成立は否定される。また、原審で主張しなかった不法占有に基づく損害賠償請求を、上告審で新たに主張することは認められない。
問題の所在(論点)
1. 賃貸借契約の締結が詐欺による営業権の騙取を目的とした共同不法行為に該当するか。2. 原審で主張していなかった「不法占有による損害賠償」を上告審で主張し、適法な上告理由とすることができるか。
規範
1. 詐欺による共同不法行為(民法719条)が成立するためには、加害者が被害者を欺罔し、財産上の損害を与えるという事実が証拠に基づき認定されなければならない。2. 上告審は法律審であるため、原審で主張しなかった新たな請求原因を上告の理由とすることはできない(民事訴訟法312条・401条参照)。
重要事実
上告人(賃借人側)は、被上告人(賃貸人側)両名が本件賃貸借契約を利用して上告人を欺罔し、その営業権を騙取して多額の財産上の損害を与えたと主張して、共同不法行為に基づく損害賠償を求めた。また、上告人は、発起人の地位が協同組合に承継されるか否か、および不法占有による損害賠償についても争った。
あてはめ
1. 原審において、提出された全ての証拠を検討しても、被上告人らが上告人を欺罔して営業権を騙取した事実は認められないと判断されており、この事実認定は妥当である。したがって、詐欺を前提とする不法行為は成立しない。2. 発起人の地位承継の成否については、前提となる不法行為が否定される以上、判決の結論に影響を及ぼさない。3. 不法占有に基づく損害賠償請求は、原審で一度も主張されていないため、上告審での主張は失当である。
結論
詐欺による共同不法行為の成立は否定され、また原審で主張しなかった新たな請求原因に基づく論旨も採用できないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事実認定の妥当性を争う上告理由は、原則として適法な上告理由にならないこと(事実誤認の制限)、および不法行為の主張において欺罔行為と損害の因果関係が厳格に証明されるべきことを示している。また、訴訟手続上、上告審での新主張禁止の原則を確認する際に引用される。
事件番号: 昭和31(オ)718 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約の当事者が誰であるかは事実認定の問題であり、原審が適法な証拠に基づき被上告人らが請負人ではないと判断した以上、上告理由となる法令違背は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人ら6名が本件工事の請負人であると主張して訴えを提起した。しかし、原審は証拠関係を検討した結果、被上告人ら…