判旨
不動産上に仮登記を有する権利者は、本登記を申請するために必要な条件を具備したときは、仮登記義務者に対して本登記手続を請求することができる。
問題の所在(論点)
仮登記権利者が、仮登記後に本登記申請に必要な条件を具備した場合に、仮登記義務者に対して本登記手続を請求することができるか。仮登記に基づく本登記請求権の存否が問題となる。
規範
不動産につき仮登記を経由している権利者は、実体法上の権利が確定し、かつ登記法上の本登記申請に必要な要件(条件)を具備した場合には、仮登記義務者に対し、その仮登記に基づき本登記手続をなすべきことを請求する実体法上の権利を有する。
重要事実
本件において、被上告人は対象不動産について仮登記を有していた。その後、被上告人は当該仮登記に基づき本登記を申請するために必要な実体法上および手続上の条件を具備するに至った。そこで、被上告人は仮登記義務者である上告人に対し、本登記手続の履行を求めて提訴した。原審は被上告人の請求を認容したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
仮登記は将来なされるべき本登記の順位を保全する効力を有するところ、権利者が本登記を申請するに必要な条件(実体的な権利の確定や期限の到来、条件の成就等)を実際に具備した場合には、もはや仮登記の状態にとどめておく理由はなく、順位保全された効力を具体化させるべきである。本件においても、被上告人が本登記申請に必要な条件を具備したことが認定されており、仮登記義務者に対して本登記を求めることは正当な権利行使であると解される。
結論
被上告人の本登記請求を認めた原判決は正当であり、仮登記権利者は条件を具備したときは本登記を請求できる。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)561 / 裁判年月日: 昭和32年6月18日 / 結論: その他
一 仮登記のなされた不動産につき第三者のための所有権取得の登記がなされたときにおいても、仮登記権利者は本登記をなすに必要な要件を具備する場合は、仮登記義務者に対しては本登記、右の第三者に対しては抹消登記の請求をなし得るものと解すべきである。 二 右の場合、仮登記権利者が右の第三者に対し不動産所有権の確認を求めることは許…
本判決は、仮登記に基づく本登記請求権の法的根拠を簡潔に示したものである。司法試験においては、仮登記の流用や抹消後の回復、あるいは条件付権利の保全に関連して、本登記請求の可否が問われた際の出発点となる規範である。事案に応じて「本登記を申請するに必要な条件」の内容(売買予約の完結権行使など)を具体的に特定してあてはめる必要がある。
事件番号: 昭和36(オ)882 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
不動産売買により既に所有権の移転がある結果、不動産登記法第二条第一号の仮登記をすべき場合に、売買予約を原因として同条二号の仮登記がなされても、右仮登記は順位保全の効力を有すると解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)1201 / 裁判年月日: 昭和34年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が元本の一部を弁済したとしても、当然に代物弁済予約を失効させる合意があったとは認められず、また予約完結権を行使し得る状況でこれを行使せず債務の履行を一部受けていたとしても、特段の事情がない限り、それは権利の放棄ではなく履行の猶予と解される。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)と債務者(上告…
事件番号: 昭和32(オ)322 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務の担保としての代物弁済契約において、目的物の価格が債務額を著しく超過する場合であっても、公序良俗違反等の特段の事情がない限り有効であり、家屋明渡し遅延に関する損害賠償額の予定も原則として有効である。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、約20万円の借入金等の債務を担保するため、時価100…
事件番号: 昭和29(オ)462 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
木造瓦葺二階建工場建坪一二坪二合五勺、二階同は後記(判決参照)のような工事により、木造瓦葺二階建店舗建坪一一坪七合八勺、二階同、木造瓦葺平屋便所建坪一坪、木造亜鉛葺平屋居宅二坪九合四勺となつても、建物の同一性を失わないものと解すべきである。