一 仮登記のなされた不動産につき第三者のための所有権取得の登記がなされたときにおいても、仮登記権利者は本登記をなすに必要な要件を具備する場合は、仮登記義務者に対しては本登記、右の第三者に対しては抹消登記の請求をなし得るものと解すべきである。 二 右の場合、仮登記権利者が右の第三者に対し不動産所有権の確認を求めることは許されない。
仮登記の効力
不動産登記法7条,民法177条,民訴法225条
判旨
所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記の目的たる権利と相容れない処分に基づき第三者の権利取得の登記がなされた場合、仮登記権利者は、仮登記義務者に対し本登記を請求できるだけでなく、第三取得者に対してその登記の抹消を請求できる。仮登記義務者は仮登記権利者の権利行使を妨げない限度でのみ処分を許容されるため、第三者は仮登記権利者に対し、本登記の目的と相容れない限度でその権利取得を主張できない。
問題の所在(論点)
不動産登記法上の仮登記がなされた後、本登記前に第三者への所有権移転登記がなされた場合において、仮登記権利者は当該第三者に対し、直接その登記の抹消を請求し得るか。
規範
所有権移転請求権保全の仮登記には、本登記のために順位を保存する効力がある。仮登記義務者は仮登記後においても処分行為をなし得るが、それは仮登記権利者の権利行使を妨げない限度でのみ許容される。したがって、仮登記権利者が本登記をなすに必要な要件を具備したときは、仮登記後に現れた第三取得者に対し、その権利取得を否認して登記の抹消を請求することができる。
重要事実
上告人(仮登記権利者)は、D(仮登記義務者)に対する債権を担保するため、D所有の建物につき代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記を了した。その後、被上告人(第三取得者)は、同建物につき売買予約による仮登記を経て、売買による所有権移転の本登記を了した。その後、Dが弁済期に債務を弁済しなかったため、上告人が代物弁済契約上の権利を行使し、被上告人に対し登記の抹消を求めた。
事件番号: 昭和30(オ)562 / 裁判年月日: 昭和32年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産上に仮登記を有する権利者は、本登記を申請するために必要な条件を具備したときは、仮登記義務者に対して本登記手続を請求することができる。 第1 事案の概要:本件において、被上告人は対象不動産について仮登記を有していた。その後、被上告人は当該仮登記に基づき本登記を申請するために必要な実体法上および…
あてはめ
本件において、上告人は被上告人が登記を経由する前に、順位保全の効力を持つ本件仮登記を了している。その後、被上告人が取得した所有権は、上告人の代物弁済予約の完結によって取得する所有権と相容れないものである。仮登記義務者Dによる処分は仮登記権利者である上告人の権利行使を妨げない限度でしか認められないため、上告人が予約完結権を行使して本登記請求権を確定させた以上、被上告人はこれに優先する権利を主張できない。したがって、上告人は第三取得者である被上告人に対し、その登記の抹消を求めることが認められる。
結論
仮登記権利者は、仮登記より後に権利を取得した第三者に対し、その権利取得を否認して登記の抹消を請求できる。したがって、上告人の被上告人に対する登記抹消請求は認められる(ただし、所有権確認請求については本登記前であるため棄却される)。
実務上の射程
仮登記の順位保全的効力を具体化した基本判例である。答案上は、仮登記に基づき本登記を請求する場合の相手方の選択(仮登記義務者)と、第三取得者に対する登記抹消請求の可否(直接請求可)を論述する際に用いる。実務上は、不動産登記法第109条に基づく承諾請求の手続きが一般的であるが、実体法上の請求権として抹消請求が可能であることを示す意義がある。
事件番号: 昭和33(オ)416 / 裁判年月日: 昭和38年3月28日 / 結論: 棄却
一 甲が登記簿上乙の所有名義になつている甲所有の建物を丙に譲渡した後、丙の所有権取得登記前に、甲の債権者丁が右建物についてなした乙より甲への代位による所有権移転登記ならびに甲を債務者とする仮差押の登記は、いずれも有効である。 二 右仮差押の登記後丙の所有権取得登記がなされても、丙は建物所有権取得をもつて丁に対抗すること…
事件番号: 昭和34(オ)723 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。 第1 事案の概要:D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記…
事件番号: 昭和32(オ)150 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】処分禁止の仮処分債権者は、被保全権利である所有権に基づく給付請求権が認められない場合には、仮処分執行前に当該不動産を譲り受けた者に対して登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない。 第1 事案の概要:上告会社(債権者)は、D(債務者)との建築完成時の所有権移転特約を根拠に本件建物の所有権を主張し、D…
事件番号: 昭和30(オ)981 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
家屋が、甲から乙、丙を経て丁に転々譲渡された後、乙の同意なしに丁のため右家屋について中間省略登記がなされたときであつても、原審認定のような事情(原判決参照)があつて乙が、右中間省略登記の抹消登記を求める正当な利益を欠くときは、右抹消請求は許されない。