木造瓦葺二階建工場建坪一二坪二合五勺、二階同は後記(判決参照)のような工事により、木造瓦葺二階建店舗建坪一一坪七合八勺、二階同、木造瓦葺平屋便所建坪一坪、木造亜鉛葺平屋居宅二坪九合四勺となつても、建物の同一性を失わないものと解すべきである。
建物の同一性
民法86条
判旨
建物が移築・改造され、構造や坪数等が登記簿の表示と吻合しなくなった場合でも、社会通念上、改造後の建物が従前の建物と同一性を失わないと認められる限り、従前の登記は改造後の建物について有効な登記として存続する。
問題の所在(論点)
建物の移築・改造等により登記簿の表示と現況が一致しなくなった場合、従前の建物についてなされた登記が、改造後の建物についての有効な対抗要件(不動産登記法上、あるいは民法177条の登記)として認められるか。特に建物の「同一性」の判断基準が問題となる。
規範
建物が移築・改造等によって構造・坪数等に変更を生じ、登記簿上の表示と吻合しなくなった場合であっても、以下の要件を満たす限り、当該登記は移築改造後の建物についての有効な登記として認められる。①移築改造後の建物が、登記簿上の地番と同一の地番に存在していること。②移築改造後の建物が、社会通念上、従前の建物との同一性が認められること。
重要事実
所有権登記のある工場建物(第一目録記載)につき、所有者が同一敷地上の約四、五間西方に牽引して移動させた。外部については周壁の腰板外し、空気抜きの穴の閉鎖、入口拡大、壁の塗り替え等を行い、内部については間仕切りの作成、階段の移設、便所の屋外移転等を実施した。さらに古材を用いて六畳一室程度の附属建物を増築し、店舗・便所・平屋居宅(第二目録記載)へと改装した。この結果、登記簿上の表示と現況の構造・用途が一致しなくなった。
事件番号: 昭和28(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和33年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一建物について重複して保存登記がなされた場合、登記表示と実際の建物との間に多少の不一致があっても、建物の同一性を認識し得る限り、先行する保存登記が有効であり、後発の保存登記は無効である。 第1 事案の概要:大正13年、所有者Eから贈与を受けたFが、本件建物について所有権保存登記(第1226号)を…
あてはめ
本件建物の改造は、牽引による移動や内部の間仕切り変更、外壁の塗り替え、一部増築を伴うものである。しかし、これらは建物自体の滅失・新築を伴うものではなく、既存の建物の基本的骨格を維持したままの改造に留まる。したがって、これらの変更を経た後も、社会通念上、改造後の建物(第二目録記載)は従前の建物(第一目録記載)と同一性を失わないと解される。また、建物は同一地番内に所在し続けており、登記簿の表示が移築改造後の建物の表示として認め得るものであるため、公示の機能を果たし得る。
結論
移築改造後の建物は従前の建物と同一性を失わない。よって、従前の登記は移築改造後の建物について有効に存続し、対抗要件として認められる。
実務上の射程
建物の同一性に関するリーディングケースである。答案上は、不動産物権変動の対抗要件の文脈で、現況と登記が不一致な場合に「社会通念上の同一性」があるか否かを判断する枠組みとして用いる。牽引移築や大規模リフォームが行われた事案で、登記の流用(無効な登記の流用とは異なる概念)の可否や、登記の有効性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)156 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾を得て増改築した場合、増改築部分が既存部分と相併合して初めて建物としての効用を完うする関係にあるときは、賃貸人の所有に帰属する。 第1 事案の概要:建物の賃借人が、所有者(賃貸人)の承諾を得た上で、自己の材料と費用を投入して建物に増築及び改築を施した。しかし、当該増改築部分は、…
事件番号: 昭和30(オ)562 / 裁判年月日: 昭和32年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産上に仮登記を有する権利者は、本登記を申請するために必要な条件を具備したときは、仮登記義務者に対して本登記手続を請求することができる。 第1 事案の概要:本件において、被上告人は対象不動産について仮登記を有していた。その後、被上告人は当該仮登記に基づき本登記を申請するために必要な実体法上および…
事件番号: 昭和31(オ)819 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】個人商店の営業用財産について権利の移転承継がなされた後、当該営業と同一の事業を目的とする会社が設立された場合、特段の事情がない限り、当該財産は現物出資により会社に帰属する。また、和解条項に賃貸借の合意があっても、その永続性が不確実で営業継続に支障を来す恐れがある場合は、会社の権利取得を否定する理由…