判旨
同一建物について重複して保存登記がなされた場合、登記表示と実際の建物との間に多少の不一致があっても、建物の同一性を認識し得る限り、先行する保存登記が有効であり、後発の保存登記は無効である。
問題の所在(論点)
同一建物について二重に保存登記がなされた場合、登記上の表示と実況に相違がある先行登記の有効性と、後発登記との優劣が問題となる。
規範
不動産登記の公示機能に鑑み、一つの不動産について二重に保存登記がなされた場合、原則として先行する保存登記が有効となり、後発の登記は無効となる。また、保存登記に記載された建物の表示(坪数等)が実況と多少相違していても、建物の建築時期や敷地上の状況から当該建物を指称するものと認められ、建物の同一性が確認できる限り、その登記は有効な公示力を有する。
重要事実
大正13年、所有者Eから贈与を受けたFが、本件建物について所有権保存登記(第1226号)を経由した。この登記の坪数は実況と相違していたが、建物は建築以来増改築がなく、敷地内には当該建物以外に同種の建物は存在しなかった。その後、昭和19年にEが自己名義で二重に保存登記(第2270号)を行い、これに基づき上告人への移転登記がなされた。一方、F名義の先行登記は昭和21年に実況に合わせる更正登記がなされ、被上告人がその権利を承継した。
あてはめ
第1226号の先行登記は、坪数の表示に相違はあるものの、敷地内に他に建物が存在しない等の事情から本件建物を表示するものと認められ、建物の同一性が認められるため有効である。この有効な先行登記が存在する以上、後になされた第2270号の保存登記は無効である。先行登記に基づく更正登記が後発の保存登記より後になされたとしても、先行登記自体の有効性は妨げられず、先行登記を基礎とする被上告人は上告人に対して所有権を対抗できる。
結論
先行する保存登記が有効であり、これに基づく権利取得者は、後発の保存登記に基づき権利を主張する者に対し、所有権を対抗することができる。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
二重保存登記(重複登記)の解消原則である「先登記有効の原則」を確認した事例である。表示の不一致があっても同一性が認められれば有効な登記として扱われるため、実務上は登記名義人の同一性のみならず、物理的状況による同一性の判断が重要となる。
事件番号: 昭和29(オ)462 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
木造瓦葺二階建工場建坪一二坪二合五勺、二階同は後記(判決参照)のような工事により、木造瓦葺二階建店舗建坪一一坪七合八勺、二階同、木造瓦葺平屋便所建坪一坪、木造亜鉛葺平屋居宅二坪九合四勺となつても、建物の同一性を失わないものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和39年7月24日 / 結論: その他
甲名義の所有権保存登記がなされた甲所有の建物について、二重に乙名義の所有権保存登記がなされ、次いで、甲名義の登記が不法に抹消された後に、丙が乙名義の登記に基づき右建物の所有権取得登記を経由した場合、丙は、甲名義の登記の抹消回復登記につき「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」に当らない。
事件番号: 昭和33(オ)416 / 裁判年月日: 昭和38年3月28日 / 結論: 棄却
一 甲が登記簿上乙の所有名義になつている甲所有の建物を丙に譲渡した後、丙の所有権取得登記前に、甲の債権者丁が右建物についてなした乙より甲への代位による所有権移転登記ならびに甲を債務者とする仮差押の登記は、いずれも有効である。 二 右仮差押の登記後丙の所有権取得登記がなされても、丙は建物所有権取得をもつて丁に対抗すること…