甲名義の所有権保存登記がなされた甲所有の建物について、二重に乙名義の所有権保存登記がなされ、次いで、甲名義の登記が不法に抹消された後に、丙が乙名義の登記に基づき右建物の所有権取得登記を経由した場合、丙は、甲名義の登記の抹消回復登記につき「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」に当らない。
抹消回復登記につき「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」に当らないとされた事例。
不動産登記法67条
判旨
不動産登記法上の「登記上の利害関係を有する第三者」とは、回復登記により登記の形式上からみて損害を被るおそれがある者を指し、別個の二重登記(新登記)を起点とする移転登記名義人はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
不法に抹消された旧登記の回復登記を申請する場合において、別系統の新登記を起点として所有権移転登記を経由した登記名義人は、不動産登記法上の「登記上の利害関係を有する第三者」に該当するか。
規範
不動産登記法(旧67条、現68条)にいう「登記上の利害関係を有する第三者」とは、抹消回復登記により登記の形式上からみて一般的に損害を被るおそれがあると認められる者をいう。したがって、損害を被るおそれを登記の形式上知り得ない者は、たとえ実質的に損害を被るおそれがあっても、これに該当しない。
重要事実
真の所有者である被上告人名義の旧登記が存在する建物につき、無権利者のDが二重に自己名義の所有権保存登記(新登記)を経由した。その後、旧登記は被上告人の意思に基づかず抹消された。一方で、新登記を起点として上告人らに順次所有権移転登記がなされた。被上告人は旧登記の抹消回復登記を申請するため、新登記系統の登記名義人である上告人らに対し、回復登記への承諾を求めた。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
あてはめ
上告人らは、旧登記が抹消され新登記のみが存在する状態において、当該新登記を起点として順次移転登記を受けた者にすぎない。回復されるべき旧登記の登記面を形式的に確認しても、上告人らは物権者として記載されておらず、旧登記の回復によって上告人らが損害を被るおそれがあることを登記の記載から知ることはできない。したがって、実質的な利害関係の有無にかかわらず、登記の形式上は「利害関係を有する第三者」とはいえない。
結論
新登記系統の移転登記名義人である上告人らは、旧登記の抹消回復につき「登記上の利害関係を有する第三者」に該当しない。したがって、被上告人の承諾請求は認められない。
実務上の射程
二重登記の解消場面における「承諾」の要否を判断する重要な基準である。本判決の論理によれば、承諾が必要な第三者はあくまで同一の登記用紙上の記載から形式的に判別される者に限定される。答案上は、登記の連続性や形式的審査権限の限界を論ずる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。
事件番号: 昭和26(オ)107 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 破棄差戻
一 甲から不動産を買受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないに拘らず、甲から丙名義に所有権移転登記を受けることを承認したときは、民法第九四条第二項を類推し、乙は丙が所有権を取得しなかつたことを以て善意の第三者に対抗し得ないものと解すべきである。 二 乙が買受けた不動産につき単に名義上所有権取得の登記を受けたにすぎ…