建物所有権確認事件において、原告が初め建物の所有権の承継取得を主張し、後にその原始取得を主張するに至つたとしても、請求の原因の変更とはならない。
請求の原因の変更とならない一事例
民訴法232条
判旨
建物の所有権確認訴訟等において、所有権取得の具体的な原因(承継取得か原始取得か)は請求を理由付ける攻撃方法にすぎず、訴訟物そのものではない。したがって、取得原因の主張を変更しても請求の基礎に変更はなく、訴えの変更には当たらない。
問題の所在(論点)
建物の所有権をめぐる訴訟において、所有権取得の原因を「承継取得」から「原始取得」に変更することが、訴えの変更(請求の原因の変更)にあたるか。すなわち、所有権取得原因は訴訟物を特定する要素か、あるいは単なる攻撃方法にすぎないかが問題となる。
規範
訴訟物とは、原告が裁判所に対して求める特定の権利または法的地位の存否を指す。給付の訴えや確認の訴えにおいて、特定の権利(所有権等)が発生するに至った個別の法的構成(原始取得、承継取得、時効取得等)は、請求の原因そのものではなく、請求を基礎付ける攻撃防御方法(事実上の主張)にすぎない。したがって、これらの主張を変更したとしても、請求の基礎に変更はないものと解する。
重要事実
被上告人(原告)が、上告人(被告)に対し建物の所有権を主張して訴えを提起した事案。被上告人は、当初、当該建物の所有権を「承継取得」したと主張していたが、訴訟の途中で「原始取得」したとの主張に切り替えた。これに対し、上告人側は、このような主張の変更は請求の原因の変更(訴えの変更)にあたり、許されない旨を争って上告した。
事件番号: 昭和29(オ)559 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権に基づく物権的請求において、請求原因は原告が所有権を有する事実自体であり、その取得原因は攻撃方法としての主張にすぎない。したがって、第一審の売買から控訴審での売渡担保契約への取得原因の変更は、訴えの変更(請求原因の変更)には当たらず、弁論主義の範囲内の主張の変更として許容される。 第1 事案…
あてはめ
本件の訴訟物は建物の「所有権」自体である。被上告人が主張する取得原因(承継取得か原始取得か)は、その所有権が被上告人に帰属することを基礎付けるための攻撃方法(理由付け)にすぎない。仮に主張を承継取得から原始取得へと変更したとしても、被上告人が一貫して主張しているのは「当該建物の所有権の帰属」という同一の法的地位であり、請求の基礎に変更があるとは認められない。
結論
取得原因の変更は単なる攻撃方法の変更であり、請求の原因(訴訟物)の変更ではない。したがって、訴えの変更手続を経ずとも主張の切り替えは可能であり、上告は棄却される。
実務上の射程
旧訴訟物理論(実体法上の権利ごとに訴訟物を捉える立場)を前提としつつ、所有権の帰属を争う場合には、その取得原因の種類を問わず所有権という一つの単位で訴訟物を捉えるべきことを示した。答案上は、訴えの変更(民訴法143条)の要否や、既判力の客観的範囲(114条)を論じる際に、所有権取得原因が訴訟物に含まれないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和33年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一建物について重複して保存登記がなされた場合、登記表示と実際の建物との間に多少の不一致があっても、建物の同一性を認識し得る限り、先行する保存登記が有効であり、後発の保存登記は無効である。 第1 事案の概要:大正13年、所有者Eから贈与を受けたFが、本件建物について所有権保存登記(第1226号)を…
事件番号: 昭和25(オ)173 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他主占有者が所有の意思があるものと認められるためには、民法185条に基づき、自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示するか、または新権原によりさらに所有の意思をもって占有を始めることを要する。 第1 事案の概要:上告人は、分家当時に素行が修まらなかったため、通例行われる家屋等の分与を受…
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
事件番号: 昭和25(オ)313 / 裁判年月日: 昭和28年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を他人の名義を借りて払い下げを受け、自己の費用で建物を建築した実質的権利者は、承諾なくなされた名義人による保存登記に拘束されず、当該建物の所有権を主張できる。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人Aの名義を使用して建物の払下げを受け、自己の費用で当該建物(二棟)を分割建築した。しかし、上告人…