判旨
個人商店の営業用財産について権利の移転承継がなされた後、当該営業と同一の事業を目的とする会社が設立された場合、特段の事情がない限り、当該財産は現物出資により会社に帰属する。また、和解条項に賃貸借の合意があっても、その永続性が不確実で営業継続に支障を来す恐れがある場合は、会社の権利取得を否定する理由にはならない。
問題の所在(論点)
個人事業の会社成り(法人化)に伴う営業用財産の承継において、財産内容の変動や、和解条項に基づく不確定な賃貸借合意が存在する場合でも、会社への権利帰属が認められるか。
規範
特定の事業に供される営業用財産群について、当該事業の承継を目的として新設された会社に対し一括して出資がなされた場合、個別の財産内容に増減変更が生じていたとしても、特段の事情がない限り、その時点での営業用財産全体が会社に帰属する。また、和解による利用権の設定が、営業の存続可能性を確実に保障するものでない限り、所有権の帰属判断に影響を及ぼさない。
重要事実
亡Dが経営していたE商店の営業用財産について権利の移転承継が繰り返された後、昭和23年2月20日にE商店と同一の事業を目的とする被上告会社が設立された。この際、本件物件を含む営業用財産はすべて被上告会社に出資された。上告人は、営業用財産の内容に変動があったことや、和解条項により上告人が被上告会社に物件を賃貸する旨の合意(但し賃貸条件は会社存続条件を具備した後に協議するとの留保付)があることを根拠に、会社への権利帰属を争った。
あてはめ
まず、E商店の営業用財産に増減変更があったとしても、それが当時の営業用財産の一部を構成する以上、特段の事情がない限り権利者に帰属し、現物出資を通じて会社に承継される。次に、和解条項に賃貸借の記載がある点については、賃貸条件が後日の協議に委ねられており、その永続性が確実とは言い難い。上告人が現に反訴で財産の引渡しを求めている事実に照らせば、当該和解が被上告会社の営業継続に影響を与えないとはいえず、会社の所有権取得を否定する事情にはならない。
結論
本件物件は被上告会社に帰属する。和解条項等の事情は、被上告会社の権利取得を妨げるものではない。
実務上の射程
個人事業から会社組織への移行期における財産承継の有効性を判断する際の枠組みとして機能する。特に、現物出資の対象となる「営業用財産」の特定において、個別財産の変動を柔軟に捉える点や、不確定な賃貸借合意よりも事業継続の実態を重視する点は、実務上の財産確定において有用である。
事件番号: 昭和29(オ)462 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
木造瓦葺二階建工場建坪一二坪二合五勺、二階同は後記(判決参照)のような工事により、木造瓦葺二階建店舗建坪一一坪七合八勺、二階同、木造瓦葺平屋便所建坪一坪、木造亜鉛葺平屋居宅二坪九合四勺となつても、建物の同一性を失わないものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約により新築された建物の所有権帰属に関し、請負人が代金未払の状態で建物を注文者に引き渡した場合、建物の所有権は注文者に移転する。また、実態のない所有権移転登記が通謀虚偽表示に該当する場合、当該登記に基づく権利主張は認められない。 第1 事案の概要:請負人EおよびFは、注文者Dから本件建物の建…