判旨
債務者が元本の一部を弁済したとしても、当然に代物弁済予約を失効させる合意があったとは認められず、また予約完結権を行使し得る状況でこれを行使せず債務の履行を一部受けていたとしても、特段の事情がない限り、それは権利の放棄ではなく履行の猶予と解される。
問題の所在(論点)
債務の一部履行がなされた場合や、予約完結権の行使が可能であるのにこれを行使せず履行を受けていた場合に、予約完結権の消滅(放棄や予約の失効)が認められるか。
規範
代物弁済予約において、予約完結権を行使し得る時期に達した後に、債権者が直ちに行使せず債務者から本来の債務の一部履行を受けていたとしても、特段の事情がない限り、それは予約完結権の放棄を意味するものではなく、債務者の利益のために行使を猶予していたものと推認するのが相当である。また、元本の一部弁済があった事実のみをもって、予約を失効させる合意の成立を認めることはできない。
重要事実
債権者(被上告人)と債務者(上告人)との間で、金銭消費貸借契約に伴い代物弁済の予約が締結された。債務者は、被上告人が昭和27年6月に予約完結権を行使できたにもかかわらずこれを行使せず、むしろ債務の一部弁済を受けていたことから、予約完結権は放棄された、あるいは予約は失効したと主張して争った。
あてはめ
本件において、元本の一部弁済がなされた事実は認められるものの、それによって代物弁済予約を失効させる旨の合意が成立したと認めるに足りる証拠はない。また、被上告人が予約完結権を行使可能であった時期に行使せず、債務の一部履行を受けていた事実は、債務者側の利益のために行使を「猶予」していたとみるのが自然であり、これを直ちに権利の放棄と評価すべき「特段の事情」も認められない。
結論
代物弁済予約完結権は消滅しておらず、清算の問題が生じるとしても、それとは別個に予約完結権を行使することは可能である。
事件番号: 昭和32(オ)322 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務の担保としての代物弁済契約において、目的物の価格が債務額を著しく超過する場合であっても、公序良俗違反等の特段の事情がない限り有効であり、家屋明渡し遅延に関する損害賠償額の予定も原則として有効である。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、約20万円の借入金等の債務を担保するため、時価100…
実務上の射程
代物弁済予約が実質的に担保として機能している場合において、一部弁済による権利消滅を否定し、債権者の権利行使の柔軟性を認めた事例である。答案上は、予約完結権の行使時期や権利消滅の成否が問題となる場面で、一部弁済や行使の遅延が直ちに権利放棄とならない根拠として引用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
事件番号: 昭和24(オ)201 / 裁判年月日: 昭和25年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が弁済期に債務を履行しない場合に、担保物件の所有権を直ちに債権者に帰属させ、物件を明け渡す旨の合意(代物弁済予約)は、特段の事情がない限り有効である。書面上「売渡担保」との記載があっても、当事者の真意が代物弁済予約にあると認められる場合には、その合意に従った効力が認められる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和30(オ)561 / 裁判年月日: 昭和32年6月18日 / 結論: その他
一 仮登記のなされた不動産につき第三者のための所有権取得の登記がなされたときにおいても、仮登記権利者は本登記をなすに必要な要件を具備する場合は、仮登記義務者に対しては本登記、右の第三者に対しては抹消登記の請求をなし得るものと解すべきである。 二 右の場合、仮登記権利者が右の第三者に対し不動産所有権の確認を求めることは許…