判旨
単なる支払拒絶後の裏書は、手形法20条1項但書が規定する「拒絶証書の作成後」の裏書には該当せず、裏書人に対する抗弁をもって被裏書人に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
手形法20条1項但書にいう「拒絶証書の作成後」の裏書に、証書の作成を伴わない単なる「支払拒絶後の裏書」が含まれるか。換言すれば、支払拒絶の事実のみをもって抗弁の対抗が認められるか。
規範
手形法20条1項但書は、拒絶証書の作成後または拒絶証書作成期間の経過後になされた裏書(期限後裏書)についてのみ指名債権譲渡の効力(人的抗弁の切断の否定)を認めている。したがって、単なる「支払拒絶」がなされた後にされた裏書であっても、それが拒絶証書の作成前または作成期間内であれば、通常の裏書としての効力を有し、抗弁は切断される。
重要事実
上告人は、本件手形について支払拒絶がなされた後に裏書が行われたことを理由に、手形法20条1項但書に基づき、裏書人の前主に対する抗弁を被裏書人である相手方に対抗し得ると主張して争った。なお、拒絶証書作成の有無や時期に関する具体的な日時は判決文からは不明である。
あてはめ
本件における裏書は、主張によれば「支払拒絶後」のものであるが、手形法20条1項但書の適用を受けるためには「拒絶証書作成後」等の要件を満たす必要がある。単なる支払拒絶の事実は、同条項の「拒絶証書作成後」あるいは「拒絶証書作成期間経過後」という厳格な時間的要件には該当しない。したがって、本件裏書に期限後裏書の効力を認めることはできず、抗弁の承継を認める余地はない。
結論
単なる支払拒絶後の裏書は手形法20条1項但書の適用対象外であり、抗弁の対抗は認められない。
実務上の射程
期限後裏書の成否が争点となる事案において、拒絶証書作成の有無という形式的要件を重視する立場を裏付ける。答案上は、人的抗弁の切断(手形法17条)の例外を検討する際、単なる支払拒絶のみでは足りず、法定の期間経過または証書作成が必要であることを示す論拠として使用する。
事件番号: 昭和54(オ)271 / 裁判年月日: 昭和55年12月18日 / 結論: 棄却
約束手形の支払拒絶証書作成前でその作成期間の経過前にされた裏書は、不渡の符箋等により満期後の支払拒絶の事実が手形面上明らかにされたのちのものであつても、満期前の裏書と同一の効力を有する。