約束手形の支払拒絶証書作成前でその作成期間の経過前にされた裏書は、不渡の符箋等により満期後の支払拒絶の事実が手形面上明らかにされたのちのものであつても、満期前の裏書と同一の効力を有する。
不渡の符箋等により満期後の支払拒絶が手形面上明らかにされたのちの裏書と手形法二〇条一項
手形法20条1項,手形法77条1項1号
判旨
約束手形の支払拒絶証書作成前かつ作成期間経過前にされた裏書は、たとえ不渡の事由が手形面上明らかになった後であっても、満期前の裏書と同一の効力を有する。
問題の所在(論点)
手形法20条1項但書に関し、支払拒絶証書の作成期間内であっても、実質的に支払拒絶の事実が判明した後にされた裏書が「期限後裏書」に該当するか。
規範
手形法20条1項但書にいう「拒絶証書作成後」の裏書(期限後裏書)とは、支払拒絶証書が実際に作成された後、または証書作成期間が経過した後にされた裏書を指す。したがって、たとえ不渡符箋の貼付等により満期後の支払拒絶の事実が手形面上明らかであっても、証書作成期間内かつ作成前になされた裏書は、通常の満期前裏書としての効力(権利移転的効力、担保的効力、資格授与的効力)を有する。
重要事実
約束手形の所持人が、支払期日に呈示したものの支払を拒絶された。手形面上には不渡符箋が貼付され、支払拒絶の事実が明らかな状態となった。その後、支払拒絶証書が作成される前であり、かつその作成期間内(手形法44条)において、当該手形に裏書がなされた。この裏書が「期限後裏書」として指名債権譲渡の効力しか持たないのか、それとも通常の裏書の効力を持つのかが争点となった。
あてはめ
本件における裏書は、支払拒絶証書が作成される前になされており、かつ、その作成期間の経過前になされている。手形法20条1項の規定は、支払拒絶証書の作成または作成期間の経過という形式的な基準を重視している。不渡符箋等により実質的に支払拒絶の事実が手形面上から認識し得る状態にあったとしても、同条項にいう「拒絶証書作成後」には該当しない。したがって、本件裏書は期限後裏書には当たらないと評価される。
結論
本件裏書は満期前の裏書と同一の効力を有する。したがって、通常の裏書としての効力が認められる。
実務上の射程
期限後裏書の成否について、実質的な不渡りの認知ではなく、拒絶証書の作成または作成期間の経過という形式的要件を重視する立場を明確にした。答案上では、裏書がなされた時点を「拒絶証書作成期間内か否か」で画一的に判断する際の根拠として用いる。不渡符箋の存在を理由に抗弁の切断を否定しようとする主張を排斥する文脈で有効である。
事件番号: 昭和27(オ)1263 / 裁判年月日: 昭和29年3月11日 / 結論: 棄却
期間後裏書の被裏書人に対しては、その裏書の裏書人に対する人的抗弁をもつて対抗することができるが、右裏書人の前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。