判旨
認知請求の訴えにおいて、懐胎の原因となった情交の日時が原告の主張と裁判所の認定で多少異なっても、懐胎の事実を基礎づける主要事実に変更がない限り、処分権主義には反しない。
問題の所在(論点)
認知請求の訴えにおいて、懐胎の原因となった情交の日時について、当事者の主張と異なる日時を認定することが、処分権主義に反し「当事者が申し立てない事項」についての判決にあたるか。
規範
当事者が申し立てていない事実を基礎に判決をすることはできない(処分権主義:民訴法246条参照)。しかし、訴訟上の請求を特定するために必要な「主要事実」の範囲内であれば、裁判所が証拠に基づき当事者の主張と多少異なる細部的事実を認定しても、その同一性を害しない限り適法である。
重要事実
原告(被上告人)が被告(上告人)に対し、母との1回の情交により懐胎・出生した子であるとして認知を求めた。原告は情交の日を昭和23年11月24日頃と主張したが、原審は証拠に基づき、それより14日前の同年11月10日頃に情交があったと認定し、請求を認容した。被告は、この認定が主張外の事実に基づくものであり、処分権主義に反すると主張して上告した。
あてはめ
認知請求における主要事実は、被告と母との間に懐胎の原因となる情交があったという事実である。原告の主張した「11月24日頃」と裁判所が認定した「11月10日頃」は、14日程度の差にすぎない。この程度の差であれば、その情交が原告の母の懐胎の原因であると認められる限り、主要事実としての同一性は維持されている。したがって、主張と異なる日時を認定しても、当事者の申し立てない事項を判決したことにはならない。
結論
原審の事実認定に処分権主義違反の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
具体的な日時は主要事実を構成する具体的事実(細部)にすぎず、懐胎の原因となった情交の存否というレベルで主要事実を捉える。不意打ち防止の観点から、日時が大幅に異なり防御に支障が出る場合には釈明が必要となる可能性もあるが、本判決は十数日のズレであれば釈明なしの認定も許容する姿勢を示している。
事件番号: 昭和32(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制認知請求における親子関係の存否に関し、母が懐胎可能期間中に被告以外の男性と肉体関係を持たなかったと認められる場合には、特段の事情がない限り、被告の子であるとの事実認定は適法である。 第1 事案の概要:被上告人(子)の母Dは、上告人(父とされる男性)と肉体関係を継続していた。Dは、この間に上告人…