判旨
認知請求の訴えにおいて、懐胎時期における情交関係の認定と鑑定結果を総合して父子関係を認めることは、自由心証主義の範囲内として適法である。
問題の所在(論点)
認知請求の訴えにおける父子関係の認定において、懐胎時期の情交関係の認定と鑑定結果の総合評価による判断が許容されるか。また、当事者の供述を自白とみなすべきかが問題となる。
規範
認知請求(民法787条)における父子関係の存否は、懐胎可能な時期における男女の情交関係の有無という間接事実の認定に加え、科学的証拠である鑑定結果を総合的に考慮して判断する。これら事実認定の手法は裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被上告人(子)は昭和28年4月6日に出生した。原審は、被上告人の母Dと上告人(父とされる者)が昭和27年6月末日から7月上旬頃に情交関係を結んだ事実を認定した。また、これに加えて複数の鑑定結果を総合し、上告人と被上告人の間に親子関係があることを導き出した。これに対し、上告人は自白の解釈や事実認定のプロセスに不服を申し立てて上告した。
あてはめ
本件では、子の出生日から逆算して懐胎時期と重なる昭和27年6月末から7月上旬の情交関係が具体的に認定されている。この情交事実という間接事実と、科学的客観性を有する鑑定結果を併せて検討することで、上告人が父であるとの確信を得るに足りる。なお、上告人が指摘する鑑定人に対する陳述は、裁判上の自白を構成するものではなく、原審が単なる仮定論として付加的に言及したに過ぎないため、判決の基礎となる事実認定を左右しない。
結論
原審が情交時期の認定と鑑定結果を総合して父子関係を認めた判断に違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
認知請求訴訟における事実認定のあり方を示した事例である。科学的鑑定(DNA鑑定等)が未発達な時代の判例ではあるが、「情交関係の認定+鑑定結果の総合評価」という枠組みは、現代のDNA鑑定を主軸とする実務においても証拠評価の基本構造として参照しうる。また、鑑定プロセスでの陳述の証拠能力や自白該当性の判断についても示唆を与える。
事件番号: 昭和37(オ)1324 / 裁判年月日: 昭和38年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】非嫡出子とその父との間の親子関係(民法787条)を認定するにあたっては、母の受胎可能期間における情交関係の存否、他者との情交の形跡の有無、父としての言動、及び血液型鑑定の結果を総合的に考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(子)の母は、受胎可能期間中に上告人(父)と継続的に情交を結…