判旨
強制認知請求における親子関係の存否に関し、母が懐胎可能期間中に被告以外の男性と肉体関係を持たなかったと認められる場合には、特段の事情がない限り、被告の子であるとの事実認定は適法である。
問題の所在(論点)
懐胎可能期間中に、母が被告以外の男性と肉体関係を持っていないことが認定される場合、被告を父とする事実認定が事実誤認(民事訴訟法上の裁量逸脱)となるか。
規範
認知の訴え(民法787条)において、親子関係の存否を判断するにあたっては、母が懐胎可能期間中に被告以外の男性と肉体関係を持った事実の有無、及び被告との間での継続的な肉体関係の有無を総合して事実認定を行う。特段の反証がない限り、他男性との関係の不存在は被告との間の親子関係を強く推認させる。
重要事実
被上告人(子)の母Dは、上告人(父とされる男性)と肉体関係を継続していた。Dは、この間に上告人以外の男性と肉体関係を結んだ事実は認められない状況であった。これに対し、上告人側は特定の事情を根拠に親子関係を否定すべきであると主張して上告した。
あてはめ
原審が挙げた証拠によれば、母Dは上告人と肉体関係を継続していた期間中、他の男性と肉体関係を結んだ事実はないと認められる。この認定は証拠に照らして合理的である。上告人が主張するような諸事情があったとしても、直ちに「他の男性と関係があった」との推定を働かせることはできず、証拠の取捨選択及び事実認定は裁判所の専権に属する事項である。したがって、上告人との親子関係を認めた原判決に違法はない。
結論
母が懐胎期間中に他男性と肉体関係を持っていない以上、上告人を父とする事実認定は適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
認知の訴えにおける親子関係の証明に関し、血液型鑑定等の科学的証拠が不十分な時代(昭和30年代)の判例であり、現在はDNA鑑定等が優先される。しかし、間接事実から親子関係を推認する手法としては現在も有効であり、被告以外の男性との交際可能性を排除することが、実務上の立証における重要な要素となることを示している。
事件番号: 昭和29(オ)91 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
認知の訴において、(イ)甲(原告)の母は、受胎可能の期間中乙(被告)と継続的に情交を結んだ事実があり(ロ)右期間中甲の母が乙以外の男と情交関係のあつた事情は認められず(ハ)乙は甲出生の頃甲の母を妻に迎えたい旨申入れた事実があり(ニ)血液型からすれば乙が甲の父であり得べきときは、他に別段の事情のないかぎり、乙は甲の父であ…