判旨
判決書の記載において、「事実」と記載すべき箇所を「理由」と誤記したとしても、判文全体から事実の摘示が認められる場合には、判決の違法とはならない。
問題の所在(論点)
判決書の構成において、「事実」と書くべき箇所を「理由」と誤記した場合に、民事訴訟法上の理由不備や理由齟齬の違法(現行法312条2項6号参照)を構成するか。
規範
判決書における形式的な記載の誤り(誤記)があったとしても、判決文全体を通じて、判決の基礎となる事実が適法に摘示されていると認められる場合には、その誤記のみをもって理由齟齬等の違法があるとはいえない。
重要事実
上告人は、原判決が被上告人を上告人の子であると認定した点に対し、事実認定の不当を主張して上告した。また、原判決の判決書において、事実を摘示する箇所の冒頭に「事実」と記載すべきところを「理由」と誤記していたという事実がある。
あてはめ
原判決は、その判文の示すとおり事実を摘示しており、実質的に判断の基礎となる事実関係を明らかにしている。冒頭の標記を「事実」ではなく「理由」としたのは単なる誤記に過ぎず、判決の内容自体を左右するものではない。したがって、原審の専権に属する事実認定を非難するに過ぎない上告理由や、形式的な誤記の指摘は、適法な上告理由に当たらない。
結論
単なる項目の名称の誤記は判決の違法を構成しないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の形式的瑕疵が上告理由となるかという限界事例を示す。答案上は、判決の「理由」に事実が包含されている場合など、実質的に事実の摘示や理由の記載が備わっていれば、形式的な不備のみで破棄事由とはならないことを説明する際の論拠となる。
事件番号: 昭和28(オ)1239 / 裁判年月日: 昭和29年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、記録上唯一の証拠とは認められない証拠申請の却下等、単なる訴訟法違反の主張は、民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当しないと判示しました。 第1 事案の概要:上告人が、原審における証拠申請の取り扱い等について訴訟法違反を主張して上告を提起した事案。なお、当該証拠申請は…