判旨
上告審において、原審で主張していなかった新たな抗弁を主張することは許されない。また、原審の証拠取捨や事実認定の適否は、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
上告審において、1.原審で主張していなかった民法上の更改の抗弁を新たに主張できるか、2.原審の事実認定や証拠取捨の当否を上告理由として主張できるか。
規範
1. 上告審は原則として法律審であり、原審(事実審)において主張しなかった新たな抗弁を上告理由として主張することは、民事訴訟の手続的安定性及び不意打ち防止の観点から許されない。2. 事実の認定及びこれに供する証拠の取捨選択は、原則として事実審の専権に属し、特段の事情がない限り、これに対する非難は適法な上告理由に該当しない。
重要事実
上告人は、原審において民法513条2項(現行法513条1項)に基づく更改の主張を行っていなかったが、上告審に至って新たにこの更改の成立を主張(抗弁)した。また、その他の上告理由として、原審が行った証拠の取捨選択や事実認定の内容を不当とする非難を含めていた。
あてはめ
1. 本件において、上告人は更改の抗弁を原審で一切主張していない。これは「原審で主張しない抗弁を新に主張する」ものであり、法律審としての性質に反するため採用できない。2. 事実認定や証拠の取捨に関する不満は、単なる事実関係の争いであり、上告適法の理由(憲法違反や重大な手続違反等)には該当しないと解される。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張しなかった更改の抗弁は採用されず、事実認定に対する不服も適法な上告理由とは認められない。
実務上の射程
民事訴訟法上の「上告受理の申立て」や「上告」の際、事実審(控訴審まで)に提出しなかった攻撃防御方法の提出を制限する原則を確認する判例である。答案上は、主張立証の時期を逸した際の「時機に後れた攻撃防御方法」(民訴法157条)や、上告審の法律審的性格を説明する文脈で使用される。
事件番号: 昭和26(オ)470 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告において、原審の証拠取捨・事実認定の非難や、単なる訴訟法違反の主張は、上告受理の要件たる法令解釈に関する重要な事項を含まない限り、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の証拠取捨判断および事実認定を非難し(論旨第一点)、さらに訴訟法違反(論旨第二点)を主張して上告を…