判旨
証拠が提出され、かつ当事者によって援用されたことが調書により明確であるならば、その写しが記録に編綴されていないことのみをもって判決の違法とすることはできない。
問題の所在(論点)
証拠が提出され援用された事実が調書上明確である場合に、その証拠の写しが記録に編綴されていないことが、判決の違法事由(民事訴訟法上の手続違背)となるか。
規範
訴訟において提出された証拠の取り扱いに関し、証拠の提出および援用の事実が口頭弁論調書等の公文書によって客観的に確認できる場合には、記録への編綴という形式的要件を欠いていたとしても、直ちに手続上の違法を構成しない。
重要事実
上告人は、甲第五号証という証拠について、その写しが訴訟記録に編綴されていないことを理由に、原審の判断に違法があると主張して上告した。しかし、当該証拠が提出され、かつ上告人自身がこれを援用した事実は、裁判所の調書に明確に記載されていた。
あてはめ
本件では、問題となっている甲第五号証について、提出および上告人による援用の事実が調書によって明確に裏付けられている。記録に編綴されていないという事態は、証拠の顕出プロセスにおける事務的な不備に過ぎず、調書によってその存在と援用が確認できる以上、実質的な審理の適正を損なうものではないと解される。
結論
証拠の写しが記録にないことのみをもって違法とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
訴訟記録の整理状況に不備があっても、弁論調書の記載等で証拠の顕出が確認できる場合には、その証拠に基づいた事実認定を有効に維持できる。ただし、実務上は争いを避けるため、適切な編綴を求めておくべきである。
事件番号: 昭和30(オ)551 / 裁判年月日: 昭和30年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠申請に対し、採用しない旨の決定を口頭弁論調書に明記せず、証拠調べを行わないまま弁論を終結させた場合であっても、訴訟の指揮及び経過から取調の要なしとして暗黙に排斥したものと認められるときは適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠申請を行ったが、口頭弁論調書にはこの申請を…