挙証者がみずから所持する文書に関する書証の申出は、証すべき事実を表示して文書を提出してすれば足り、同時にその写を提出することはその有効要件ではない。
書証の申出と写の提出
民訴法258条,民訴法311条,民訴規則39条
判旨
挙証者が自ら所持する文書の書証の申出は、証すべき事実を表示して文書を提出すれば足り、同時にその写しを提出することは申出の有効要件ではない。
問題の所在(論点)
書証の申出の際、原本の提出等と同時にその「写し」を提出しなかった場合、当該書証の申出は不適法となり、証拠調べの効力が否定されるか。
規範
挙証者が自ら所持する文書(民事訴訟法旧231条、現219条参照)に関する書証の申出において、申出の効力が認められるためには、証すべき事実(立証趣旨)を表示して当該文書を提出することで足りる。文書の写し(副本等)の提出は、相手方の準備や訴訟の便宜のために行われるものではあるが、書証の申出そのものの有効要件(適法要件)ではない。
重要事実
被上告人(一審原告)は、第一審において甲第1号証の1乃至3を提出し、適法な証拠調べが行われた。上告人(一審被告)は当該書証の成立について認否を行い、控訴審においても第一審の口頭弁論の結果が陳述された。上告人は、書証の申出に際して文書の写しが提出されなかったことが民事訴訟法上の手続違背(旧137条等)にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件では、第一審において被上告人から証拠の提出がなされ、これに基づき適法な証拠調べが実施されている。上告人はその成立について認否も済ませており、手続保障の観点からも支障は生じていない。書証の申出は、立証趣旨の明示と文書の提出をもって有効に成立するものであり、写しの不提出という事実をもって、先行する適法な証拠調べの結果が無効になることはない。したがって、原本が提出され、適正に証拠資料となった以上、写しの有無は結論に影響しない。
結論
書証の申出に際し写しが提出されなかったとしても、証拠調べが適法に行われた以上、その手続に違法はない。
実務上の射程
実務上、証拠説明書や写しの提出は規則によって義務付けられているが、本判例はそれらが申出の適法性を左右する要件ではないことを示している。答案上は、証拠調べの手続違背が主張される場面で、申出の本質的要件(文書の提出と立証趣旨の明示)の充足を指摘し、瑕疵の軽微性を論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)197 / 裁判年月日: 昭和36年9月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】裁判所が売買契約の成立を認定する場合であっても、当事者が予備的に主張した通謀虚偽表示の抗弁について判断を遺脱し、かつ証拠資料の合理的な解釈を怠ったときは、審理不尽・理由不備として破棄を免れない。 第1 事案の概要:上告人は、売買の成立を否定するとともに、仮に売買があったとしてもそれは通謀虚偽表示で…