判旨
国家公務員は国民全体の奉仕者として公共の利益に奉仕すべき立場にあるため、公共の福祉による必要最小限の制限として団体交渉権等の労働基本権が制限されることは憲法28条に違反しない。
問題の所在(論点)
国家公務員の労働基本権を制限し、不利益処分に対する審査請求権を排除する規定(行政機関定員法附則5項)が、憲法28条に違反し無効となるか。
規範
憲法28条が保障する勤労者の団体交渉権等の労働基本権であっても、公共の福祉のために制限を受ける。特に、国家公務員は国民全体の奉仕者(憲法15条1項)として公共の利益のために勤務し、職務遂行に専念すべき性質を有するため、一般の勤労者とは異なる特別の取扱(労働基本権の制限)を受けることが当然に許容される。
重要事実
行政機関定員法(当時)附則3項に基づき、過員整理が行われた。当局は整理方針および内部基準を定め、上告人らを「非協力者」に該当すると判断して免職処分とした。上告人らは、同法附則5項が国家公務員法上の不利益処分に対する審査請求権を剥奪している点は憲法28条の団体交渉権を侵害し無効であると主張して争った。
あてはめ
国家公務員は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき地位にあり、職務遂行にあたっては全力を挙げてこれに専念しなければならない。本件における審査請求権の排除は、過員整理という公共の福祉のために必要やむを得ない措置としてなされたものである。したがって、公務員の職務の公共性や特殊性に鑑みれば、このような制限が付されていても直ちに憲法28条に違背するものとはいえない。
結論
行政機関定員法附則5項の規定は、憲法28条に違反せず有効である。したがって、これに基づく免職処分および審査請求権の制限は適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)396 / 裁判年月日: 昭和35年7月21日 / 結論: 棄却
一 町村合併による新町の発足により旧町村の正式職員であつた者が新たに新町の職員として任命されたような場合には、条件附任用に関する地方公務員法第二二条の適用はない。 二 地方公務員法第二八条第一項第一号、第三号に該当するかどうかの判断は、任命権者の純然たる自由裁量に任された事項ではなく、同条の趣旨にそう一定の客観的標準に…
公務員の労働基本権制限に関する初期の判例であり、「国民全体の奉仕者論」を根拠に公共の福祉による制限を肯定する。後に「全農林警職法事件」等で制限の合憲性がより精緻に理論化されるが、答案上は公務員の特殊性を論じる際の基礎的な枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)170 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国鉄職員の身分関係は公法と私法の両面を有しており、行政機関職員定員法に基づく定員削減に伴う解雇について、憲法28条の労働基本権を制限することは違憲ではない。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(国鉄)において、行政機関職員定員法(定員法)の施行に伴い、定員削減を目的とした職員の整理(解雇)が行われた。…
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。