地方公務員の依願休職処分は無効ではない。
地方公務員の依願休職処分の効力。
地方公務員法28条2項
判旨
地方公務員法28条2項は本人の意に反する休職を定めた規定であるが、本人の希望と任命権者の必要性が合致する場合には、法律に明文の規定がなくとも依願休職処分をすることは有効である。
問題の所在(論点)
地方公務員法28条2項に限定的に列挙された休職事由に該当しない場合であっても、本人の同意に基づく「依願休職」を認めることができるか。
規範
地方公務員法28条2項各号に規定する場合以外であっても、当該公務員が休職を希望し、かつ、任命権者が休職処分の必要を認めて依願休職処分をした場合には、当該処分を無効とすべきではない。休職は身分を保有しつつ職務に従事しない地位におくものであり、本人の意思に基づく限り、当該公務員の権利を害するものではないからである。
重要事実
上告人は犯罪の嫌疑により逮捕・拘禁されていた。教育委員会側が拘禁中の上告人と面接した際、上告人は「申し訳ない、退職させてほしい、できなければ休職でも何でもよい、処置を一任する」と述べ、涙を浮かべて申し出た。上告人は、主事が予め作成していた休職願書の氏名下に自ら拇印を押して手渡した。その後、任命権者はこの願い出に基づき依願休職処分を行ったが、上告人は当該処分の有効性を争った。
あてはめ
上告人は、自ら退職や休職を希望する旨を表明し、用意された休職願に自発的に拇印を押印している。この事実に照らせば、本件休職願は上告人の任意かつ自発的な意思に基づいて完成されたものと認められる。したがって、本人の希望が存在し、任命権者がその必要性を認めて行った本件処分は、本人の権利を不当に害するものではなく、法律の予定しない無効な処分とはいえない。
結論
本件依願休職処分は有効である。地方公務員法28条2項の規定にかかわらず、公務員の意思に基づく休職処分は許容される。
実務上の射程
法律に明文規定のない行政処分であっても、相手方の同意・申請に基づく「依願」の形式をとる場合、その性質が相手方の権利を不当に害しないものであれば、私法的な合意の要素を組み込んで有効性を肯定できることを示唆している。公務員法上の地位の得喪変更における「自発的意思」の重要性を判断する際の基礎となる判例である。
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