判旨
他人名義を用いて契約を締結する際、相手方が名義人本人のみに契約を限定する意思がなく、指定された者であれば誰でもよいという意思を持っていた場合には、実際の行為者または指定された者を契約の当事者として確定すべきである。
問題の所在(論点)
他人の名義を用いて契約が締結された場合(いわゆる「他人名義による契約」)、契約の当事者は名義人本人か、それとも名義を使用して現実に契約を成立させた実質的な関係者か。具体的には、相手方の当事者に対する認識や意思が、当事者の確定にどのような影響を及ぼすかが問題となる。
規範
法律行為の当事者確定にあたっては、行為者と相手方の双方の意思が一致している場合はその意思に従い、一致しない場合は相手方の視点から合理的かつ客観的に契約当事者を決定すべきである。売主が、名義上の買主本人が買主となることに固執せず、名義人が指定した者であれば誰であっても売却する意思を有していた場合には、実質的な交渉者や名義人の指定した者を当事者と解するのが相当である。
重要事実
不動産取引において、Dが被上告人に本件宅地を買い受けさせることとし、被上告人を伴ってF銀行本店に赴いた。DはF銀行との間で、被上告人を買主として本件宅地等の売買契約を締結した。売主であるF銀行側には、買主をD本人に限定して契約を締結しようとする意思はなく、Dが指定した者であれば誰を買主としても構わないという意思があった。
あてはめ
本件では、名義上の関係者であるDが被上告人を伴って銀行を訪れ、被上告人を買主とする契約を締結している。売主である銀行の意思を確認すると、単に書類上の買主名義人をDとしたにとどまり、D本人が買主でなければ売却しないという限定的な意思は認められない。むしろ、Dの指定した者であれば誰でもよいという包括的な承諾の意思があったといえる。そうであれば、客観的・合理的な相手方の理解に基づき、銀行と被上告人の間に契約を成立させる合意があったと評価される。
結論
本件売買契約は、売主であるF銀行と、実質的な買主として指定された被上告人との間に有効に成立する。
事件番号: 昭和34(オ)444 / 裁判年月日: 昭和36年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の競売において、他人の依頼を受けて名義人となり競落した場合であっても、内部関係において所有権を依頼者に移転する合意があれば、依頼者が実質的な所有権を取得する。その後、当該物件の譲受人が従前の賃貸借契約を承継することに合意した場合には、譲受人は賃借人に対して明渡請求をなし得ない。 第1 事案の…
実務上の射程
他人名義を利用した取引における当事者確定の準則を示したものである。答案上では、①行為者の意思、②相手方の意思、③相手方の認識(信頼)の有無を検討し、相手方が「名義人本人でなければ契約しなかった」といえるほど属性を重視しているか、あるいは本件のように「名義人の指定する者で足りる」として実質的当事者を許容しているか、という規範のあてはめに用いる。
事件番号: 昭和34(オ)777 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟(民訴法47条)において、原告、被告、参加人の三当事者間で権利関係を合一に確定する必要がある場合、原告が参加人の請求を認諾したとしても、被告がこれを争っている限り、その認諾は効力を生じない。 第1 事案の概要:原告Bが被告に対して訴えを提起し、さらに参加人が民事訴訟法71条(現4…
事件番号: 昭和31(オ)119 / 裁判年月日: 昭和35年6月17日 / 結論: 棄却
仮処分申請に基き、裁判所の嘱託により家屋所有権保存登記がなされている場合であつても、仮処分前に家屋を未登記のまま第三者に譲渡しその敷地を占拠していない右保存登記名義人に対し、敷地所有者から敷地不法占有を理由として家屋収去請求をすることは許されない。
事件番号: 昭和30(オ)645 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物明渡請求が権利の濫用に当たるか否かは、請求側の正当な目的の有無に加え、相手方側の事情を総合的に斟酌し、社会通念上是認できない程度のものといえるかによって判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(権利者)が上告人(占有者)に対し、本件建物の明渡しを求めて提訴した。上告人は、当該明渡請求が権…
事件番号: 昭和37(オ)18 / 裁判年月日: 昭和41年4月27日 / 結論: その他
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗することができないものと解すべきである。