判旨
民事訴訟法228条4項(旧326条)による二段の推定は文書の成立の真正を推定するにとどまり、記載内容の真実性(実質的証拠力)を当然に認めるものではない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法228条4項(旧326条)に基づく文書の成立の真正の推定が、当該文書の記載内容の真実性(実質的証拠力)までを保証するか。
規範
民事訴訟法228条4項(旧326条)は、文書が真正に成立したことを推定する規定である。この推定が及ぶ範囲は「形式的証拠力」すなわち作成者の意思に基づき作成されたことの証明に限られ、その記載内容が真実であるか否かという「実質的証拠力」については同条の関知するところではない。
重要事実
上告人は、原審における証拠の取捨選択および判断の過程において、民訴法326条(現228条4項)の解釈に誤りがあるとして上告を提起した。具体的には、文書の成立の真正が認められた以上、その記載内容も真実として扱われるべきであるという趣旨の主張を行ったものと解される。
あてはめ
民訴法326条(現228条4項)の規定は、文書の成立が真正であることを推定するのみである。したがって、文書の成立が真正であると認められたとしても、裁判所が自由心証に基づき、その記載内容が客観的事実と合致しないと判断し、証拠価値を否定することは適法である。上告人の主張は、形式的証拠力と実質的証拠力を混同した独自の解釈に基づく非難にすぎない。
結論
民訴法228条4項は文書の成立の真正を推定するにとどまり、記載内容の真実性とは無関係である。したがって、原判決の証拠判断に違法はない。
実務上の射程
文書の「成立の真正」を論じる際、形式的証拠力(二段の推定)と実質的証拠力の区別を明確にするために引用する。答案上は、二段の推定が及んだ後に「もっとも、実質的証拠力については裁判所の自由心証に委ねられる」と論述する際の根拠となる。
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