判旨
準消費貸借(旧民法588条)の成立において、当事者が主張する旧債務の額と裁判所が認定した額に相違があっても、当事者が自認する限度で請求を認容することは適法である。
問題の所在(論点)
準消費貸借の成否を判断するにあたり、当事者が主張する旧債務の額と、裁判所が証拠に基づき認定した額に乖離がある場合でも、準消費貸借の成立を認めることができるか。
規範
準消費貸借が成立するためには、金銭その他の代替物を給付すべき義務(旧債務)が存在し、これを消費貸借の目的とすることに合意することが必要である。裁判所は、当事者が主張する債務額と認定額が完全に一致しなくとも、証拠に基づき旧債務の存在を認め、当事者が自認する範囲内であればその成立を認めることができる。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人A(被告)に対し、下駄鼻緒の売買代金50万円の債務を目的とする準消費貸借上の債務の成立を主張して提訴した。これに対し上告人らは、同売買代金債務を消費貸借の目的とした事実は認めたが、その額は34万6000円であると自認した。原審は証拠に基づき、上告人らが自認する限度(34万6000円)において債務の成立を認めた。
あてはめ
上告人らは原審において、下駄鼻緒の代金債務を準消費貸借の目的とした事実を陳述している。原審が証拠により50万円の債務成立を前提とした上で、上告人らが自認する34万6000円の限度で被上告人の請求を認めたことは、当事者の主張を適切に解釈したものといえる。また、減額の時期等の細部が不明であっても、準消費貸借の合意そのものが認められる以上、判決の結論に影響を及ぼすものではない。
結論
上告人らが自認する限度で準消費貸借の成立を認めた原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
準消費貸借の要件論(旧債務の存在+合意)において、旧債務の特定や金額の認定に多少の齟齬があっても、主要な事実関係に争いがない範囲で請求を認容できることを示す事例である。
事件番号: 昭和31(オ)688 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】合意による相殺(相殺契約)には、民法が規定する法定相殺の要件に関する規定は当然には適用されない。また、判決における理由の不備や齟齬は、それが判決の結果に影響を及ぼさない付随的事項に関するものである限り、判決の取り消し事由とはならない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、貸金債権30万円の支…