判旨
判決文の表現に多少の不備があっても、文脈全体から合理的に解釈可能であり、証拠に基づく事実認定が適法であれば、判断遺脱等の違法はない。
問題の所在(論点)
判決文における表現の不正確さが、民事訴訟法上の判断遺脱や理由齟齬(現在の民訴法312条2項6号等に相当する事由)に該当するか。
規範
判決文の記載に誤解を招き得る表現がある場合であっても、判決文全体を通読してその趣旨が容易に了解できるものであり、かつ、挙示された証拠によって原審の事実認定が可能であるならば、当該判決に判断遺脱や理由齟齬の違法は認められない。
重要事実
上告人は、原判決が「15万円(本件債務)」と判示した点について、判断遺脱や理由齟齬の違法があると主張して上告した。原判決が指していたのは、実際には「15万円(本件準消費貸借の基本となった旧債務)」であった。
あてはめ
原判決において「15万円(本件債務)」と判示されている箇所は、判決文全体を通読すれば「本件準消費貸借の基本となった旧債務」を指す趣旨であることが容易に了解できる。また、原判決が挙げた証拠に照らせば、そのような事実認定をすることは十分に可能である。したがって、この記載は証拠の取捨選択や事実認定の合理的な範囲内にあるといえる。
結論
原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
判決文の文言解釈において、部分的な不備にとらわれず「判決文全体を通読」して合理的な趣旨を読み取るべきという実務上の解釈指針を示している。事実認定の不当性を理由齟齬として主張する際のハードルの高さを示す事例である。
事件番号: 昭和31(オ)553 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原審の証拠の取捨判断及び事実認定の適否を争うことは、単なる事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原審における証拠資料の評価や事実認定のプロセスに不服があるとして、過去の判例を引用しつつ原判決の取消しを求めて上告した事案。 第2 問題の所在…