判旨
農地法に基づき国から売渡しを受けた農地を他に譲渡する場合、一定の制限はあるものの、売却代金額を原則として自由に決定できることは憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
国から売渡しを受けた農地を第三者に譲渡する際、その売却代金額を当事者間で自由に決定できると解することが、財産権を保障する憲法29条に違反するか。
規範
自作農創設特別措置法又は農地法に基づき国から農地の売渡しを受けた者であっても、農地法所定の許可を条件として農地を他へ譲渡することが認められる。その際の代金額については、農地法施行法14条1項に基づく国への一部支払義務等の例外を除き、特段の統制規定がない限り、私人間において原則として自由に決定し得る。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法に基づき国から売渡しを受けた農地を所有していた。その後、国が自衛隊用用地として当該農地を必要としたため、上告人の承諾を得て国が所有権を取得した。上告人は、農地法15条による買収の不適用や、農地を他に売却する際の代金額が無制限に取得可能であると解することが憲法29条に違反すると主張して争った。
あてはめ
農地法上の譲渡制限については、3条1項等の許可制度が存在するほか、施行法14条1項により売渡し後10年以内の譲渡については代金の一部を国に納付すべき旨が定められている。しかし、これら以外の点において代金額を直接的に統制する規定は存在しない。したがって、私的な契約における代金額の決定は契約自由の原則に委ねられており、買収対価の正当性に関する憲法29条3項の問題とは無関係である。
結論
農地譲渡の代金額を原則自由とする解釈は、憲法29条に違反しない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(オ)35 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項の「正当な補償」とは、必ずしも常にその当時の完全な価格と一致すべきものではなく、合理的算出方法により決定された相当な額であればよい。自作農創設特別措置法による農地買収価格は、農地改革という社会変革の公共の利益に照らし、正当な補償の範囲内に属する。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創…
農地法の転用や譲渡に関する価格統制の有無が争点となる事案において、私法上の価格決定権の原則を確認する際の根拠として活用できる。ただし、現代の農地法制下では各種規制が強化されている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(オ)42 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地改革における買収対価が憲法29条3項の「正当な補償」にあたるか否かが争われ、先行の大法廷判決を維持して合憲と判断された。 第1 事案の概要:戦後の農地改革を推進するために制定された自作農創設特別措置法に基づき、政府が地主の所有する農地を強制的に買収した。上告人(地主側)は、同法6条3項に定める…
事件番号: 昭和25(オ)98 / 裁判年月日: 昭和28年12月23日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第六条第三項本文の農地買収対価は、憲法第二九条第三項にいわゆる「正当な補償」にあたる。