判旨
強行法規に違反する態様の契約であっても、当事者の一方が正規の手続を経て履行されるものと信じていた場合には、反社会的な目的を有するものとはいえず、公序良俗に反して無効とはならない。
問題の所在(論点)
統制法規に基づく割当証明書によらない物資譲渡の合意、および公定価格を超過する価格設定を含む契約が、民法90条により無効となるか。
規範
法規制のある物資の取引において、当該規制(統制法規)を潜脱する目的が当事者間に認められない場合には、契約は直ちに公序良俗(民法90条)に反して無効とはならない。また、当初の約定に価格統制違反の疑いがあっても、後に適正な公定価格に基づき合意し直された場合には、当該合意は有効である。
重要事実
上告人と被上告人は、昭和22年にパラフィン等の原材料と引換えにクレヨンを納入する契約を締結した。当時、パラフィンは指定生産資材として割当証明書による譲渡制限があったが、被上告人は「教育会を経由して正規の手続により引渡を受けることができる」と信じていた。また、当初は公定価格を誤認して代金を定めていたが、後に誤りに気付き、当時の正しい公定価格(1ダース111円80銭)に基づいて支払う旨の約定を改めて結んだ。上告人は、本件契約が統制法規および物価統制令に違反し無効であると主張した。
あてはめ
第一に、原材料の入手ルートについて、被上告人は代理人の言を信じ、教育会を通じて正規の手続により入手できると誤信していた。この事実に照らせば、被上告人側において統制法規を潜脱して物資を入手する主観的目的があったとは認められない。第二に、価格面については、当初の契約では公定価格の誤認があったものの、本件請求の基礎となる後の合意においては、当時の正しい公定価格に基づき代金が定められている。したがって、客観的にも物価統制令に抵触する事実はない。
結論
本件契約は統制法規や公序良俗に違反せず有効である。したがって、これに基づく請求を認めた原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
行政法規(取締法規)違反の契約が民事上無効となるかという局面で活用できる。当事者の一方に法規遵守の主観的意図(または正規の手続が踏まれるという正当な期待)がある場合には、公序良俗違反を否定する方向の有力な根拠となる。また、事後的な修正合意により瑕疵が治癒されることを肯定する点でも実務上重要である。
事件番号: 昭和27(オ)894 / 裁判年月日: 昭和30年9月30日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法に基く加工水産物配給規則第二条によつて指定された物資については、法定の除外事由その他特段の事情の存しない限り、同規則第三条以下所定の集荷機関、荷受機関、登録小売店舗等の機構を通ずる取引のみが有効であつて、右以外の無資格者による取引は無効と解すべきである。