一 債務引受は、特段の事情のないかぎり、重畳的債務引受と解すべきである。 二 売買契約の目的物である自動車が関税免脱車であると主張しただけでは、右契約が公序良俗に違反する旨の主張をしたものと解することはできない。
一 債務引受の性質 二 売買契約の目的物が関税免脱自動車である旨の主張と民法第九〇条違反の主張の有無
民法第3編第1章第4節,民法90条
判旨
重畳的債務引受は債務者の意思に反しても有効になし得るとともに、関税法等に違反して輸入された物件の売買であっても、その事実のみで直ちに私法上の売買契約が公序良俗に違反し無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
1. 重畳的債務引受の成立に債務者の意思は必要か。 2. 関税法等の取締法規に違反する物件の売買契約は、民法90条により無効となるか。
規範
1. 債務引受は特段の事情のない限り重畳的債務引受と解すべきであり、重畳的債務引受は、債権者と引受人の合意があれば債務者の意思に反しても有効に成立する。 2. 行政上の取締法規(関税法等)に違反する取引であっても、そのことのみから直ちに当該契約が公序良俗(民法90条)に違反し、私法上の効力が否定されるものではない。
重要事実
上告人は、本件債務引受が債務者の意思に反するため無効であると主張し、また、売買の目的物である自動車が、日米地位協定に基づく臨時特例法や関税法に違反して正規の輸入手続(譲受許可)を経ていない関税免脱車であったことから、売買契約が公序良俗に違反し無効であると主張した。
あてはめ
1. 債務引受の性質について、判決は特段の事情がない限り重畳的なものと解する。重畳的債務引受は、債権者に対して新たな債務者を増やす行為であり、債務者にとって不利益がないため、債務者の意思を問わず有効と解される。 2. 本件自動車が関税法等に違反して輸入された事実は認められる。しかし、同法は行政上の取締を目的とするものであり、これに抵触したとしても、直ちに売買契約の公序良俗違反を導くものではない。したがって、本件売買代金債権の効力に消長を来すものではないと評価される。
結論
1. 本件債務引受は、債務者の意思に反する場合であっても有効である。 2. 本件自動車売買契約は公序良俗に違反せず、有効である。
実務上の射程
1. 債務引受の類型が不明な場合の解釈指針(重畳的推定)として活用。また、470条以下の改正民法下でも、重畳的債務引受が債権者・引受人間の契約で成立する点(470条3項)を補強する論拠となる。 2. 取締法規違反と民法90条の成否に関する典型例。法規の目的が公益の保護にあるか、それとも単なる行政上の取締りにあるかを区別する際の判断材料となる。
事件番号: 昭和30(オ)201 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強行法規に違反する態様の契約であっても、当事者の一方が正規の手続を経て履行されるものと信じていた場合には、反社会的な目的を有するものとはいえず、公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人は、昭和22年にパラフィン等の原材料と引換えにクレヨンを納入する契約を締結した。当時…