判旨
物価統制法に基づく統制額を超過する価格による売買契約は、特段の事情のない限り、当該契約を全面的に無効とするものではない。
問題の所在(論点)
物価統制法に基づく統制額を超過する価格で締結された売買契約が、私法上、公序良俗違反(民法90条)や強行法規違反として全面的に無効となるか。
規範
物価統制法等の行政取締法規に違反する行為であっても、私法上の効力については、当該法規が公序良俗(民法90条)に反すると評価されるほどに反社会性を有する場合や、強行法規として私法的効力を否定する趣旨を含まない限り、直ちに契約の全部を無効とするものではない。特段の事情がない限り、統制額を超える価格を定めた売買も全面的に無効にはならない。
重要事実
上告人は、昭和23年11月、北海道地区においてミシンの売買契約を締結した。当時の北海道におけるミシンの販売価格は、物価庁告示および地方物価事務局長が定めた特別輸送諸掛を加算した額により統制されていた。本件売買において、この統制額を超過する対価が定められたため、その私法上の効力が争われた。
あてはめ
本件におけるミシンの売買は、当時の物価庁告示等によって定められた統制額を超過する価格でなされている。しかし、物価統制法による制限は主として行政的な取締りを目的とするものであり、これに抵触したからといって直ちに私法上の契約の効力を否定すべき公序良俗違反があるとまではいえない。また、判決文からは特段の事情(著しく不当な利益を得る目的等)の存在は認められない。したがって、統制額超過をもって売買契約を全面的に無効と解することはできない。
結論
本件売買契約は、統制額を超過する価格を定めていたとしても、全面的に無効となるものではない。
実務上の射程
取締法規違反と私法上の効力の関係を示す典型例である。答案上は、強行法規への該当性や民法90条の検討において、法規の目的が単なる行政取締りか、それとも私法秩序の維持かを見極める際の根拠として用いる。全部無効を否定し、一部無効(統制額までの減額)の可能性を残す論理展開に繋げやすい。
事件番号: 昭和27(オ)976 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】統制違反による売買の無効を主張するには、具体的な違反事実の主張立証が必要であり、また弁論期日に不出頭の当事者に対しても告知された判決言渡期日は有効である。 第1 事案の概要:化学製品の売買代金請求訴訟において、被告(上告人)は、本件商品が統制物資であることを理由に、売買取引から適法に代金債権は発生…