木材の売買において、その品等を確定せず、単に証言等により当該材種の一等品の公定価格を超過する価格を公定価格違反でないと認めるのは違法である。
木材の公定価格違反の有無を証言により認めることの適否
昭和18年農林省告示469号,同23年物価庁告示1015号,同23年物価庁告示1259号,民訴法394条
判旨
公定価格違反の存否が争点となる事案において、裁判所は当事者の供述等の間接的な証拠のみにより漫然と違反の有無を判断すべきではなく、客観的な告示基準に基づき、個別の取引対象の材種・品等を特定した上で公定価格と現実の売買価格を照合すべきである。
問題の所在(論点)
公定価格制度が存在する取引において、売買価格が当該規制に抵触するか否かを判断するための裁判所の事実認定および評価の在り方(適正な認定手続)。
規範
法規により公定価格が定められている場合、売買価格の公定価格違反の有無を確定するためには、①対象物の属性(材種・品等など)を客観的に特定し、②当該属性に適用される告示上の公定価格を抽出した上で、③現実の約定価格と照合するというプロセスを経なければならない。単なる証人の証言等により具体的照合を欠いたまま違反の存否を認定することは、事実認定の要を欠き許されない。
重要事実
木材の売買取引において、売買価格が公定価格に違反するか否かが争われた。本件取引当時は農林省告示および物価庁告示により、木材の材種や品等に従って公定価格が細かく定められていた。原審は、被上告人の商業帳簿や証人の供述を総合し、すべての木材が公定価格で取引されたと認定した。しかし、記録上の商業帳簿に記載された一部の木材(杉並四分板九寸小節等)について、仮に最高等級の一等品として計算しても、実際の取引単価が告示の定める公定価格を超過している疑いがあった。
あてはめ
本件では木材の材種・数量・価格について上告人が争っていない事実があるにもかかわらず、原審は各材種ごとの公定価格を具体的に照合していない。証拠上の杉並四分板等の取引価格を告示と照らし合わせれば、一等品と仮定しても公定価格を超過していることが明らかである。したがって、個別の材種・品等を特定して公定価格と照合する作業を怠り、漫然と「違反なし」と結論付けた原審の認定には違法がある。
結論
公定価格違反の有無を認定するにあたり、客観的な告示価格との照合を欠いた原判決には認定上の違法があるため、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
価格統制制度が背景にある古い判例だが、現代の司法試験においても、強行法規や行政規制が私法上の契約の効力に影響を及ぼす場面において、裁判所がいかに客観的指標に基づき事実認定を行うべきかという「適正な事実認定の手法」や「理由不備・理由食い違い」を論じる際の示唆となる。
事件番号: 昭和27(オ)465 / 裁判年月日: 昭和28年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の当事者が誰であるかの認定は事実認定の問題であり、原審が証拠を総合して適法に判断した以上、上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は木材の売買契約における当事者が誰であるかが争われた事案である。原審は、提出された諸証拠を総合的に検討した結果、本訴の当事者間に当該木材の売買契約が成立…